第74回 アッパーイーストサイド/フレンチ Sel et Poivre

伝統のレシピで地域に根付くフレンチ

 マンハッタンの街角では、毎日のように新しいレストランができているのを目にするが、それと同じくらい姿を消してしまう店も多い。この地で10年も生き残れば、もはや“老舗”と呼ばれてもおかしくない、そんな厳しい業界の中で1989年から28年間営業を続けているフレンチビストロがある。

ジューシーな肉汁がたまらない、秘伝のレシピで作られた 「ビストロバーガー」(写真は撮影用)

ジューシーな肉汁がたまらない、秘伝のレシピで作られた 「ビストロバーガー」(写真は撮影用)

 アッパーイーストサイドのSel et Poivreでは、フランスの伝統的な家庭料理をコージーな雰囲気とともに提供する。平日でも通常午後8時ごろにはバーカウンターも含め65ある席がほとんど埋まり、客層はさほど若過ぎず落ち着いている。「フォアグラのテリーヌ(18.95ドル)」や「サーモングリル(25.95ドル)」、「エスカルゴ(10.95ドル)」などオーソドックスなフレンチメニューに劣
らずこの店で人気なのが、「ビストロバーガー(16.95ドル)」。ミディアムレアがおすすめというこのバーガーは、一般的なものと比べ脂分が少なく、肉汁と肉そのものの旨みが味わえる点は柔らかいステーキを食べている感覚に近い。「特段高価な肉を使用しているわけではなく、創業以来変わらぬ肉の調合で守り抜いている自慢の一品だ」、と教えてくれたのは創業者の息子で現オーナーシェフのクリスチャン・スキエンル氏。先代から受け継いだのは、レシピだけでなくお客様への真心も同じ。客席を回りながら時折店内に響く彼の豪快な笑い声は、繊細な仕事が光るハイエンドなフレン
チをより身近なものに融和してくれるスパイスかのよう。

レモンの効いたホワイトワインソースが よく合う「サーモングリル」(写真は撮影用)

レモンの効いたホワイトワインソースが
よく合う「サーモングリル」(写真は撮影用)

 クラシックな木製のテーブルと椅子、そして壁にところ狭しと飾られた創業者一家の家族写真からあふれる温もりと、変わらない伝統の味が、28年の時を経てそこに根をおろしている。これらを守っていくことが、この地で長く愛される秘訣といえるのかもしれない。
予約推奨。服装はスマートカジュアルで。
 
 
Sel et Poivre
www.seletpoivrenyc.com
853 Lexington Ave(bet 64th & 65th St)212-517-5780