第三回:芋焼酎「鉄幹」とフランスの「ブリー」
3年目に入りました焼酎ソムリエ大竹彩子によるこちらのコラム。今年度はチーズと焼酎とのペアリングをテーマに、ニューヨークで飲める焼酎の中から毎回一銘柄をピックアップし、それに合うチーズを紹介していきます。月曜の夜からチーズをつまみに焼酎を一献いかがでしょうか?
昨年、アジア最大のお酒のコンクール「香港インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション」の焼酎部門で堂々の最高金賞という快挙を成し遂げた芋焼酎があります。鹿児島県北西部、東シナ海に面する薩摩川内市にあるオガタマ酒造が造る「古式甕仕込み 薩摩 鉄幹」です。このアジアでチャンピオンに座する「鉄幹」は伝統の和甕を使用し、白麹で造られています(黒麹で造られた「鉄幹黒」という商品もあります)。そのお味は芋焼酎らしい独特な香りは残しつつも、口に含むと一瞬にして爽やかさが広がり、続いてトロッとまろやかさが際立つとてもバランスのとれた逸品です。その飲み口の良さから、まるで芋焼酎界のワインのようでもあります。
そんな「鉄幹」にはチーズの王様との異名を持つ「ブリー」を合わせてみました。ブリーはフランスを代表する白カビタイプのチーズで、1000年もの歴史を持ちます。その見た目はカマンベールによく似ていますが、カマンベールも元はブリーの製法がカマンベール村に伝わったことから派生したものだといわれています。一般的なブリーの特徴は直径約35センチメートルと大きく、その分白カビの表面積の割合が小さいのでクセや臭みはなく、その柔らかい食感はクリーミーでとても爽やか。 逆にカビの割合が大きいチーズは熟成が早く、旨味も増しますが、臭みも増します。ですのでブリーは初心者の方でも気軽に皮の部分まで一緒に楽しむことができる選り好みしないチーズといえます。
そんな今回の主役、「鉄幹」と「ブリー」のオススメの合わせ方はブリーをオーブンで焼くベイクドブリーです。温めることによって風味が増し、パンやクラッカー、フルーツなどを添えてより「鉄幹」との相性が高まります。表面の皮が黄金色になったら出来上がりです。Brie Bakerといってココットのような形をしたブリー専用のオーブン用ポットも市販されているので、一層テーブルに華を添えてくれ、パーティーなどにも最適です。ぜひ、アジアの焼酎チャンピオン「鉄幹」とフランスのチーズの王様「ブリー」とのマリアージュを今宵はご堪能ください。
一口メモ
甕仕込みとは、土の中に8〜9割ほど甕を埋め、その中で仕込みの工程を施すことにより、外気の影響を受けにくく、温度を低温で一定に保てることによって、昔ながらのより自然な状態で焼酎造りができます。現在はホーロータンクやステンレスタンクで造られている焼酎が多いので、甕仕込みの焼酎は貴重といえます。
大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。
焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
212-715-0770 www.aya-nyc.com