第3回 太郎&ロザリーと津山さん

津山恵子さん(ジャーナリスト、クイーンズ区在住、NY在住14年)と太郎、15歳の雄。

津山恵子さん(ジャーナリスト、クイーンズ区在住、NY在住14年)と太郎、15歳の雄。

 

 ジャーナリストの津山恵子さんが日本から連れてきた白猫の太郎と、ニューヨーク生まれの黒猫のロザリー。2匹との生活について聞きました。

——太郎との出会いは?
 太郎は2002年に動物愛護市民団体からアダプトしました。子猫たちが不安そうに泣いている中で、泰然自若な子猫と目が合って、その落ち着き払った態度が気に入りました。翌年の5月に共同通信の特派員としてニューヨークに行くことになり、太郎を連れて移住しました。

——ニューヨークでの新生活は?
 仕事がハードで毎日帰宅が夜中過ぎという状況で、太郎がヒステリーを起こしてしまったんです。帰宅すると、「何してたんだー!」という感じで、すごい声でわめいて、足にしがみついて離れないので、ずるずる引きずって部屋を歩く始末でした。あまりにかわいそうなので、太郎のためにもう1匹飼うことにしました。

——ロザリーとの出会いは?
 近所のペトコで動物愛護団体「City Critters」が子猫を見せていて、その中で目が合った子猫を抱っこしていたら、「この子は臆病で抱っこされるなんて珍しい。あなたのこと好きみたい」とスタッフが驚いたので、相性がいい気がして決めました。
 ロザリーが来てから太郎はヒステリーがなくなり、帰宅すると毎日2匹一緒に迎えに出て来てくれて、とてもうまくいっています。

 

ロザリー、14歳の雌

ロザリー、14歳の雌


 

——ロザリーのエピソードは? 
 もらって来てすぐに血尿が出て、でも抱っこさせてくれないので病院に連れて行けなくて困っていました。ある日ソファーでうたた寝していたら、お腹の上に乗ってきたので驚きましたが、これはチャンスだと捕まえてすぐ救急病院に連れて行ったら、膀胱に石が見つかりました。そのとき検査をした先生がたまたま2日後に空いていて、石を取り除く手術をしてくれました。通常なら1週間も待たないといけなかったので本当にラッキーでした。

——2匹の性格は?
 全然違います。太郎は抱っこされるのが大好き。社交的で客が来るとドアまで迎えに行きます。ロザリーは人が来るとベッドの下に隠れてしまう臆病者。抱っこが嫌いなくせに気がむくと「撫でて」と顔を押し付けてきます。

——2匹はどういう存在ですか?
 かけがえのない家族です。私は仕事でも取材相手に先入観を持たないで理解していきますが、2匹ともそれぞれを個性として尊重し、あなたがこれをしたいのなら付き合うよと、いう感じで接しています。
 実は太郎とロザリーのニューヨークストーリーを絵本にしたくて、日本画家でアーティストの出口雄樹さんに墨絵を習っているところです。ぜひ実現させたいです。

 
 

【 教えて!シンゴ先生 】

アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。

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添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。

 
 
 
 

Q 猫に多い腎臓病について教えてください。
A ここでは中・高齢の猫の30から40%に発症するといわれる「慢性腎不全」に絞って解説します。

 腎臓の機能が25%以下になると血液検査に異常が出てきます。腎機能が低下すると尿毒素の排出や水分の再吸収ができなくなり、ホルモンの低下により貧血を起こします。
 飼い主は日頃から多飲多尿、食欲減退、体重減少、嘔吐などの症状に注意し、気づいたらすぐに獣医に診てもらいましょう。動物病院では血液検査、尿検査、レントゲンや腹部エコー検査を必要に応じて行い診断をします。
 慢性腎不全と診断されたらまず、することは食餌を腎臓病食に変えることです。腎臓病食はタンパク質量が制限された、腎臓に「優しい」フードです。腎臓病食を与えたグループと与えないグループとでは、平均生存日数に300日以上の違いが出たデータもあります。他にも血液中の尿毒素を抑えるサプリメントや上昇したリンの量を抑えたり、減少したカリウムを補ったりするサプリメントもあります。高血圧の猫の場合は降圧剤を併用することもあります。
 腎臓病の有効な予防法は現在ありませんが、早期に発見し治療を開始することで、余命と生活の質の改善が可能です。また最近は、以前より早く腎不全を発見できる血液検査の項目や、早期の腎不全に有効な新薬も開発されています。腎臓病が疑われる場合はただちに獣医に相談してください。
 猫の慢性腎不全は死の宣告ではありません。長期にわたりコントロールできる病態であることを理解してください。