全米で巻き起こるクラフトブリュワリーやクラフトディスティラリーのブームはとどまることを知らず、個性ある銘柄がしのぎを削り、ますます面白くなるばかり。そのクラフト人気に乗る形で大きく成長しているのがサイダー。
サイダーは、日本ではフランス語読みのシードルと呼ぶのが一般的ですが、リンゴでつくった発泡酒のこと。発酵させたリンゴを使ったサイダーを、ハードサイダーと呼びます。IPAにまつわる著書も数々手がけたビールジャーナリストのジョシュア・M・バーンスタイン氏は言います、「今特にクラフトサイダーへの関心が高まっています。ニューヨーク州はさまざまな特徴を持ったサイダリーが揃う場所です」。小粋なレストランのドリンクメニューにはクラフトサイダーを複数目にするはず。リンゴのお酒というと甘いイメージを抱きがちですが、香りが深くドライなものも多く、とても個性豊かです。
ニューヨーク州ではサイダー専用品種となるノーザンスパイやゴールデンラセット、ニュートンピッピンなどのリンゴが広く栽培されており、新鮮な原料に恵まれています。さらに2013年にはニューヨーク州でサイダー事業許可制度が制定。2016年までの3年未満で州内のサイダリーや農場などの関連事業が3倍の数に増えたとされています。
リンゴが旬の季節を迎える10月の20~29日にはニューヨークシティー・サイダー・ウィークとし、さまざまなサイダリーが参加したイベントが市内で行われます。ドライで後味のよいジンジャーフレーバーも人気の「バッド・シード・サイダー」、ソーホー味やヘルズキッチン味などマンハッタン各地の名をつけた「ビッグ・アップル・ハード・サイダー」、年に一度手摘みしたリンゴのみを使用した「ブルックリン・サイダー・ハウス」なども参加。
嬉しいのは、天然酵母を使ったサイダーはポリフェノールを含み、ビタミン、ミネラルも豊富で美白効果、老化防止にもよいということ。まずはよく冷やしたグラスに黄金色のサイダーをなみなみ注いで、フルーツの香り、キリっとしたさわやかな喉越しを堪能してみてください。
New York City Cider Week www.ciderweeknyc.com
フリー・ジャーナリスト
Aya Komboo
日本では数々の出版社で経験を積み、フリーランスへ転身。2006年よりロサンゼルスへ渡米し、現在はニューヨークを拠点にファッション/カルチャー誌などで活躍している。