ナーサリー、デイケア、プレスクールとキンダーの違いは何ですか? とよく聞かれる。英語で「What’s the differences between a nursery school and preschool?」と検索しても多くの質問と回答がヒットすることから、米国人保護者にとっても、その区別は曖昧なようだ。子どもが生まれてから就学までの時期、どのような選択があるのだろうか?
日本と米国の違い
日本では就学前の最年長で6歳児までが通う施設として、保育所(園)、幼稚園、総合的な認定こども園がある。また託児所も保育所(園)のように継続的に預かる施設から、イベントやデパートの一時預かりなど広義に使用されている。しかし日本の幼稚園、保育所(園)、託児所を単純に英訳して教育システムの違う米国の乳幼児施設に当てはめることができない。
米国では未就学児を対象にした公立の施設や学校はない。日本のように自治体に申し込み、保護者の収入に応じて保育料が変わる日本の保育所(園)のシステムもない。そのため保護者が働いている場合は、保育はナニーを雇うか私設の保育施設に入れるかの選択と、費用の捻出は保護者の責任においてなされることになる。
キンダーは小学校の一部
米国での就学はキンダーから始まる。キンダーガーテンは日本語で「幼稚園」と訳されるが、日本の幼稚園とは異なる。K―12教育制度(キンダーから高校最終学年に至る13年間の教育システム)を採用する米国でキンダーは、小学校1年生に入学する前の1年間の教育準備プログラムとして小学校の一部と考えられる。そのためキンダーからが、Department of Education(DOE=教育局)の管轄になる。
プレキンダーとUniversal Pre-K Program(UPK)の違い。
未就学児のための保育・教育施設はDepartment of Health and Mental Hygiene(DOHMH=保健精神衛生局)の管轄になる。しかしプレキンダーと呼ばれるキンダー就学前の1年間のプログラムに関しては、DOE管轄の無料の公立PKが存在する。これがUniversal Pre-K Program(UPK)と呼ばれるものだ。
ニューヨーク市は、全ての4歳児にUPKの提供を目指す「Pre-K for ALL」を促進している。UPKはキンダーと違い必ずしも公立学校に併設されてはおらず、地域の教育施設や教育局直轄の施設でも提供されている。つまり4歳児に関しては、有料の私立学校のプログラムと無料の公立UPKの選択がある。ニューヨーク市は「UPK for 3」として3歳児までこの無料幼児教育を拡大する計画を進めている。
未就学児童への豊富なオプション
このように、米国ではキンダー就学前が未就学児童となり、デイケア、ナーサリー、プレスクール、チャイルドケアセンターなどを利用することになる。
ここで注意したいのが、 提供するサービスの内容(保育・教育プログラム)と実際の施設・学校の名称が必ずしも一致しない場合が多々あることだ。学校や施設の名称で判断せずに、通わせたいプログラムの内容を学校や施設のウェブサイトで確認することが必要になる。
またどの施設も、フルタイム、半日プログラム、週2、3日のプログラム、働く保護者のための早朝ドロップオフや、延長時間などのオプションを提供している。バイリンガル教育のために、日本語と英語の施設に週の半分ずつ通わせるダブルスクールを選択する家庭もある。
保育施設:デイケアセンターとナーサリー
デイケアとナーサリースクールは、主に生後6週間からの乳幼児の保育施設とされている。ライセンスによって個人宅で保育をするフアミリーデイケアから専用施設まで選択肢が広く、ファミリーデイケアでも、設備や内容が学校と変わらない充実さを誇るところも多い。 施設の名称に関してはデイケアとナーサリーはほぼ同義に理解されていると言ってよい。
ナーサリーとプレスクール
プレスクールは、一般的に3歳から5歳児の幼児教育施設だが、2歳児から受け入れる学校もある。また、低年齢からのプログラムを提供し、ナーサリースクールと称して5歳までのプログラムを行う学校もあるため、プレスクールとナーサリースクールで内容が重なる場合も多く、同義に理解されることも多い。低所得家庭のためには、連邦法で定められた3、4歳児のための無料のヘッドスタートプログラムがある。
アーリーチャイルドフッドとオンゴーイング
アーリーチャイルドフッドはキンダー就学前までの教育施設、オンゴーイングは小中高までの私立一貫教育に続く教育施設だ。私立一貫校は通常キンダーからの入学になるが、プレスクールから始まる学校もある。私立一貫校へは最低学年からの入学が望ましいことから、このような学校への入学競争は熾烈だ。私立一貫校への進学で有名なプレスクールへの入学も同様に厳しい。
日本でいえば、プレスクールが幼稚園、ナーサリーやデイケアが保育園に近いかもしれない。しかし日本ほど明確な区分がなく、学校独自の形があるので、何歳から通わせたい(預けたい)か、時間やカリキュラム、進路に合わせたさまざまな選択が可能だ。次回は学校の探し方や応募方法を紹介する。
(文・河原その子)