美容室「ミチサロン」オーナーで、女性の自立を支援するNPO団体の活動も行うなど、多忙な毎日を送る田原ミチさん。37年間ずっと猫と一緒でしたが、初めて犬のキキとの生活が始まりました。
——犬を飼うのは初めてだそうですが、キキとの出会いは?
最後の猫が亡くなって半年経ったころ、近くに住む娘が、1人じゃ寂しいだろうと私をノースショアのシェルターに連れて行ったんです。娘は犬を飼っているので、犬がいいとしきりに言ってね。犬は飼ったことがないし、どうしようと悩んでいたら、すごくかわいい子犬がいたんです。茶目っ気があって素直そうで、この子はきっと性格がいいなと思って抱っこして、でもまだ迷っていたら、娘がさっさとサインして車に乗っちゃって、この子も喜んでいるし。決心がつかないうちに家に着いちゃいました(笑)。
——キキとの生活はいかがですか?
嵐がやって来た感じで、猫のときとは180度生活が変わりました。部屋中のものを食いちぎるはキッチンの引き出しを開けて中に入れてあるものを食べちゃうはで、めちゃくちゃな状態でした。私が出掛けると、「私を1人ぼっちにした」と腹いせにやる感じでしょうか。あまりのすざまじさに、毎日泣いていました。
そんな状態が1年も続きましたが、しつけのトレーニングを受けさせたりして、1歳半過ぎたころから(問題行動も)少しずつ減ってきて、ようやく収まりました。
その間、夜中に電話で娘に「もうだめだ」と泣いて訴えて、「もうシェルターに返しましょう」と娘が連れて帰ったこともありました。でも翌朝起きたら「やっぱり返すの、やめて」って電話しちゃったのね。ここでまた私に見捨てられたら、かわいそうすぎると思ったの。
もらってきたころ、宅配便のトラックをじっと見ては吠えていたんです。テキサス州からトラックでシェルターに運ばれて来たので、何かつらい記憶が残っているんでしょう。その気持ちを思うと、とても返す気になれなかった。今でも公園で私が見えなくなると、置き去りにされたと思って、あわてて探しに来ます。
——ミチさんにとってキキの存在は?
パートナーでしょうか。1人だとわがままになるけど、パートナーがいるとそうはいかない。自分でもよく我慢できたと思います。やっと呼吸が合ってきて、パートナーになりつつあります。
仕事もNPOの活動も何度かやめようと思ったけど、途中でやめたら自分の人生を否定してしまう気がして続けてきました。結局は自分との戦いです。なぜこの歳になってこの子が私のところに来たのか、常に考えています。絶対に何か意味があるはずなので、それが分かる日を楽しみに待っています。
【 教えて!シンゴ先生 】
アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。
添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。
Q 前回に引き続き、ペットの肥満についてお聞きします。
A 今回は、肥満が原因で起こる病気について説明します。
まずは糖尿病です。糖尿病は、インスリンの分泌現象や体のインスリンに対する抵抗性が増加し、血液中の糖がエネルギーとして使えなくなる病気です。糖尿病専用の食事を与えて、インスリンの注射を生涯にわたり打たなければならなくなる可能性があります。また糖尿病が原因で併発する病気もあります。最近は猫に多く起きているように感じます。
次は心臓や呼吸器系への影響です。過剰に蓄積した脂肪は心臓に負担を掛け、呼吸のための気道を狭めます。犬の場合は、ハアハアと常に激しく呼吸をする例が見られます。また脂肪が熱を体内に閉じ込めるため、熱中症のリスクも高まります。特に短頭種のワンちゃんは気をつけたいですね。
関節など運動機能への負担も増加します。関節炎や靭帯の損傷、また椎間板ヘルニアのリスクが高まります。特に大型犬は、関節炎で運動量が減っている上に体重が増え続けるとさらに関節を痛め、ますます運動ができなくなる悪循環が起こる可能性があります。
そして肝臓への負担です。特に猫は脂肪肝を起こすことがあり、食欲の減退、皮膚や白目が黄色になる黄疸の症状が見られることがあります。
肥満が原因で病気になるということは、逆に言えば、「肥満を改善することで病気を予防することも可能」ということです。ペットが肥満もしくは肥満傾向にあると思ったら、獣医師に相談してみましょう。肥満は病気になる危険性を高めるということを覚えておいてください。