連載㉔ 山田順の「週刊:未来地図」憲法改正前に知っておくべきこと(後編3)じつはリベラルではなく保守が憲法改正を阻んできた!

「護憲」というインチキをやめ、ずる賢さを捨てよ!

 というわけで、日本としては憲法を改正なければならない。どうしても自衛隊をまともな軍隊(フォース)として、アメリカ軍と共同で軍事作戦をできるようにしなければならない。後方支援だけしかしないなどと言っていたら、アメリカはじきに本気で怒るだろう。
 要するに、憲法を改正する最大の理由は、これまでの日米同盟の不均衡を是正することにある。アメリカが一方的にソンする関係を解消し、対等の同盟にすることにある。もちろん、日本は核を持たないのだから、対等な同盟にはなりえない。同盟条文が対等でも、日本の位置付けは「アメリカの属国」であることには変わりない。
 この属国というポジションこそ、日本の安全と平和を保証できるものだということを、私たちは自覚しなければならない。もう「護憲」というインチキをやめ、ずる賢さを改めなければならない。

アメリカの完全なる同盟国となるのが最善

 ここで、第二次大戦後の世界を振り返ってみると、冷戦はあったものの、世界を支えるルールと国際機構は、世界覇権を握ったアメリカによってつくられ、そのなかで、日本は生きてきた。
 世界全体の1人あたりGDPの推移を見ると、1950年から2015年にかけて約6倍に拡大している。世界は豊かになったわけだが、いちばん豊かになったのは20年前までは日本だった。
 つまり、パックスアメリカーナの恩恵をいちばん受けたのは、他ならぬ日本なのある。しかも、この国際秩序に対して、国連の拠出金や途上国に対するODA援助などを見れば、もっとも貢献してきたのも日本なのである。
 今後、トランプのアメリカがどうなっていくのか? は、明言できないが、トランプ以後の大統領がアメリカの世界覇権を維持することを第一とすれば、パックスアメリカーナという秩序は崩れない。世界は多極化しないだろう。となると、日本は、とりあえず憲法を改正して、アメリカの完全なる同盟国になるのが最善の選択である。
 地政学には「覇権安定論」という理論がある。これは、世界に1国、強大な国家があったとき、世界はもっとも安定するというものだ。
 この理論からも、日本が取るべき道は明確だ。憲法を改正して、かたちだけでも独立国家としてアメリカの完全なる同盟国となり、この状態を続けることである。     (了)

 
 

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【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

この続きは、12月4日発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。