第5回「筋肉痛の緩和薬」 OTC101ファーマシー探訪 with ひぐち先生

higuchisensei日本の薬剤師・薬学博士で、現在コロンビア大学で博士研究員をする樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身まだ在米2年。米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」

第5回 「筋肉痛の緩和薬」(同じ商品名でも異なる成分!?)
米国で最もポピュラーなNew Year’s Resolutionは「エクササイズ」だそうです。そういえば年が明けると、にわかにジム通いをする人が増えますね。雪かきのシーズンも到来しますので、今回は筋肉痛を緩和する市販薬をおさらいしましょう。同じ商品名でも、パッケージが異なると有効成分と含有量が全く異なります。それぞれの有効成分の効能を知り、賢く選びましょう。

 

主な有効成分とその効能。
①メンソール(Menthol)
多少の鎮痛作用はありますが、主に肌につけたときのスーッとする清涼感による痛みの緩和効果があります。
②リドカイン(Lidocaine)
局所麻酔に使われる成分。神経に作用し、痛みの信号をブロックする薬です。
③サリチル酸メチル(Methyl Salicylate)/トロラミンサリチル酸(Trolamine Salicylate)
いずれも非ステロイド抗炎症剤(NSAID)に分類される成分なので、抗炎症作用があります。少なくとも市販の塗薬・張り薬では強い部類に入ると思います。
④カプサイシン(Capsicum Extract)
唐辛子の抽出成分で温感作用があります。塗布することで皮膚にポカポカ感が得られます。
⑤カンファー(Camphor)
クスノキの精油成分で弱い鎮痛効果があります。カンフル剤(血行促進・鎮痛・消炎作用がある薬)の語源のようです。
その他
アーニカ(Arnica)
筋組織の損傷回復をサポートするホメオパシーの成分です。薬剤師としての私の守備範囲を超えるので詳しく説明できませんが、塗り薬や飲み薬が市販されています。

①同じ商品で異なる成分と含有比率!
 同じブランド名・商品名でも、いろいろな“バージョン”があり、それぞれに成分や、その含有比率が異なることを知っておきましょう。例えば同じ「ベンゲイ」でも、赤い箱の「Ultra Strength」の有効成分はカンファー4%、メンソール10%、サリチル酸メチル30%で、黄色っぽい箱の「Vanishing Scent」(匂いがすぐ消えるのが売り)はメンソールが2.5%入っているだけです。同じように「サロンパス」でも、カンファー、メンソール、サリチル酸メチルの3つを含むものもあれば、カプサイシンだけのものもあります。左の成分説明を参考に、自分のニーズに合った成分を含む薬を買いましょう。
 ちなみに筋肉痛の緩和薬の有効成分量の単位は、塗り薬も貼り薬も「%」です。1つの商品の内容量全体に占める、有効成分の比率が表示されています。

②塗るか貼るか、クリームかロールオンか
 貼るタイプは、肌に密着することで有効成分がどんどん皮下に吸収されるので、塗るタイプよりも効果が持続します。貼ったものが剝がれにくい肩や腰など、広い範囲の使用に適しています。また、成分が服に付着しないという利点もあります。
 膝や指など、よく動かす関節部分には、貼るタイプより塗るタイプでしょう。
 そして、同じ成分ならクリームでも液体(ロールオン)でも効き目は同じですが、液体の方が肌への吸収は早く、ベタベタせず手も汚れません。
 貼るタイプは利点も多いですが、粘着剤が肌に合わないとかぶれる心配もあります。その場合は、がまんせずにすぐに剝がしてください。

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※基礎疾患がある人は、市販薬であっても服用時に主治医または薬局の薬剤師に相談を。

 

知っておきたいファーマシー用語
OTC(Over The Counter)Drug
=一般用医薬品(俗にいう市販薬)。処方せんがなくても薬局で買える薬。
Active Ingredient=有効成分(薬効を示す物質)。薬の箱の裏に明記されている。

 

樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D. 
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。