連載㉚ 山田順の「週刊:未来地図」なぜアメリカと日本はここまで違うのか?(後編3) ニューヨークのトイレがウォシュレットになる日

TOTOが史上最高の売り上げを達成

 それでも、海外でウォシュレットはじょじょにだが普及しつつある。とくに中国では、近年、ものすごい勢いでトイレがウォシュレット化している。なにしろ、中国人の“爆買い”アイテムの1つにウォシュレットが入っているのだ。
 中国では、家を建てると、親戚・友人を呼んで盛大にお披露目する風習がある。そのとき、「トイレはウォシュレットにしたのでぜひ来てくれ」と言うのが、最近のトレンドになっていると、中国在住の私の知人は言う。
 実際、TOTOの業績はいい。同社が今年の4月に発表された2017年3月期の決算では、売上が1%増で史上最高の5738億円、本業の収益を示す営業利益が5%増の485億円を記録している。
 この好調な決算を支えているのが、海外でのウォシュレット販売台数の伸びである。2012年度を100とした場合、2016年度のウォシュレット販売指数は246となり、前年度比でなんと30%も増加している。2012年度からは4年で約2.5倍に伸びている。このように、ウォシュレットの海外の伸びは好調で、採算率もいい。営業利益率は国内が6.9%に対し、海外が18.2%なのである。
 そして海外の伸びの半分を叩き出しているのが、中国である。海外の比率を見ると、中国が632億円で49%を占め、アジア(中国を除く)が306億円で24%、アメリカが304億円で24%、欧州が37億円で3%となっている。為替の影響を排除した現地通貨ベースで見るエリア毎の伸びでは、中国が11%増、アジアが4%増、米国が4%増、欧州が3%増となっている。

「お尻を洗う」という文化が定着したアジア

 アメリカでのウォシュレットの知名度は、じょじょにだが上がってきている。アマゾンで「toto washlet」で検索すると、新作モデルがずらっと表示されるようになった。ニューヨークのレストランでも、モダンチャイニーズで人気の「Red Farm」(ウエストビレッジ)が、ウォシュレットを導入した。
 そうしたこともあって、TOTOは2016年にニューヨークのショールームをマンハッタン中心部に移転し、サンフランシスコでは体験型ショールームをオープンした。
 はたして、ウォシュレット(温水洗浄便座)は世界のトイレのスタンダードになるのだろうか? アメリカでも普及するだろうか?
 東南アジア諸国に行くと、トイレにハンドシャワーが備え付けられている。これは、いわゆる手動式ウォシュレットと言っていい。初めての人は使い方に戸惑うが、それでもないよりはずっとマシだ。なぜなら、昔は、トイレに用を足した紙は流せなかったからだ。
 つまり、アジアでは「お尻を洗う」という文化が、いつの間にか定着したのである。
 残念ながら、欧米にこれはない。しかし、日本のがその文化を広めることになるだろう。次にニューヨークに行くときまでに、1つでも多くの施設でウォシュレットが導入されていることを期待したい。(了)

 
 

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【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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