連載32 山田順の「週刊:未来地図」 「アメリカ第一主義」で弱体化するアメリカ(中) トランプはただのバカなのか? それとも操り人形か?

国際協定からの離脱と対中親和

 ”Make America Great Again”「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」(アメリカを再び偉大にしよう)と言ってトランプは大統領になった。しかし、今日までのことを見ていると、”Make America Weak Again”「メイク・アメリカ・ウィーク・アゲイン」(アメリカを再び弱体化しよう)、あるいは”Make America Stupid Again”「メイク・アメリカ・ステュピッド・アゲイン」(アメリカを再びバカにしよう)をやっているとしか思えない。
 昨年の大統領選挙当時から現在まで、彼はなにをやってきたか?
  NATOと日本に「守ってやるのだからもっとカネを出せ」と言って同盟国の機嫌を損ね、G7諸国に喧嘩を売ったりした。また、アメリカが盟主となるべき国際協定から離脱し、中国やロシアなどのアメリカ覇権挑戦国にチャンスを与え続けてきた。TPP脱退、NFTA放棄、パリ協定離脱、ユネスコ脱退など、すべてアメリカの影響力を弱めることにつながっている。
 とくに、TPP脱退は、中国の拡張主義に対する多大なるアシストになった。これにより、中国は「一帯一路」政策を、環太平洋地域を気にせずに促進できるからだ。
 トランプの中国政策は、当初、「貿易不均衡を是正するために関税をかける」という強硬策だった。それが、「習近平とはケミストリーが合う」などと言い出し、北朝鮮問題を丸投げして、「習近平ならやってくれる」などと、お人好しぶり発揮した。
 そして、挙句の果てに、対中強硬路線のスティーブン・バノンを切ってしまった。バノンはトランプ政権内で、「中国はアメリカの敵である」と、はっきりと認識していた1人だ。しかも、トランプを大統領選挙で勝たせてくれた恩人でもある。

トランプはロシアに操られている?

 トランプは、11月の中国訪問で2500億ドルのディールの覚書きを交わし、満面の笑みを浮かべた。しかし、これは契約ではなく単なる覚書だ。
 さらに、習近平から故宮を案内されたうえ、史上最大の歓待を受けて舞い上がり、以後、中国に対してなにも言わなくなった。こうして、中国に抱き込まれているうちに、北朝鮮にワシントンまで届くICBMを開発されてしまうのだから、トランプはとことんバカとしか言いようがない。
 なぜ、トランプは敵である中国、そしてロシアに徹底して甘いのか? 「トランプは歴代のアメリカ大統領のなかで、もっともバカだから」ということでいいのだろうか?
 トランプが、お人好しのナルシスト、おだてに弱い性格なのは間違いない。とすると、こうした点を利用されていると考えられないか?要するに、アメリカを弱体化さるために、操られているというのだ。実際、アメリカではこのような見方が根強くある。
 かつて、ルーズベルト大統領がホワイトハウスに入り込んだソ連のスパイによって操られていたように、トランプもロシアに操られているというのだ。
 これが、いわゆる「ロシアゲート」の核心である。
(つづく)

※この続きは1月9日発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
 
 

IMGP2614 3

【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com