セントマークス動物病院の獣医、関美帆子さんは2016年にイリノイ大学獣医学部を卒業後、ニューヨークに移り、2匹の愛猫と暮らしています。
——T・レックスとの出会いは?
イリノイ大の獣医学部に通っていたときに、クラスメートが農場で生まれて間もない子猫たちを見つけたんです。ところが、その中に母猫が育児放棄をしてしまった子がいて、放っておくと死んでしまうので、私がその子を引き取りました。
人見知りを全くしない子で、犬も大好き。友達が犬を連れて来ると、ドアを開けた途端に大喜びで走っていって、一緒に遊んでいます。男の人のヒゲも好きで、抱きついてヒゲを頭でスリスリするのが大好き。変な猫なんです(笑)。
獣医学部で学ぶ学生の立場から、どんなことに気をつけるべきかを気にするようになりました。たとえば男の子は尿がたまりやすいので、彼がリターを使った後は尿を観察して、異常がないか注意を払っています。
——ナジャとの出会いは?
弟の同僚が日本に帰国することになり、その人が飼っていたのがナジャでした。ナジャはぜんそく持ちだったので連れて帰るのが難しく、引き取り手を捜していたので、私が引き受けました。
——2匹の関係はどうですか?
ナジャが来たときは5歳でしたが、T・レックスはまだ子どもだったので、遊びたがってナジャに近づいていっては怒らせて、取っ組み合いの本気のけんかになって大変でした。猫は複数で飼う場合、子猫のころから一緒でないと難しいです。それがストレスだったのか、ナジャのぜんそくが激しくなってしまって。ぜんそくはほこりが原因であることが多いですが、住む場所が変わって他の猫がいるといった環境の変化は、さらにストレスになったと思います。
けんかがあまりに続いたので、それが原因でぜんそくが悪化するようなら、誰か飼い主を見つけたほうがいいかもと考えたこともありましたが、今はすっかり落ち着いてぜんそくも回復しました。T・レックスはやんちゃで出しゃばり、ナジャはおとなしくて神経質、と性格も違いますが、それぞれが好きな場所で好きなことをして、うまくやっています。
——2匹は関さんにとってどんな存在ですか?
友達ですね。何も言わなくても気持ちが伝わる友達です。犬は一緒に寝て一緒に歩いて一緒にご飯食べてという感じで、家族のような関係かなと思いますが、猫は自分がやりたいことをやっているけど、私が必要とするときにはそばに来てくれる。犬よりももうちょっと距離感があって、そういうのって友達の関係かな、と思います。
【 教えて!シンゴ先生 】
アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。
添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。
Q 寒い日が続きます。ペットも人間と同じように風邪をひくのでしょうか?
A 厳密に言うと、犬猫はいわゆる人間の風邪の原因となるウイルスには感染しません。ただし、風邪のような呼吸器系の感染症で咳、くしゃみ、鼻水のような風邪に似た症状が出ることがあります。軽い上部呼吸器系の疾患は大事に至りませんが、肺炎などを併発し長期の治療が必要な場合もあるので侮れません。特に冬は気温の低下で免疫力が低下し、ウイルスの活動も活発になります。
対策としては、定期的なワクチン接種が一番有効かと思います。犬の場合、感染力の強い「ケンネルコフ」と言われる病原体(ウイルスや細菌)に対するワクチンと混合ワクチンの接種は必須かと思います。特にグルーミングやドッグデイケアなど多数の犬が集まる施設を利用する場合は、ワクチン接種歴を確認した方がいいでしょう。そうした場所ではストレスで免疫能力が低下し、感染の確率も高まります。
猫の場合は、ヘルペスウイルスなどが原因のウイルス性疾患にかかった後に、上部呼吸器官に細菌による二次感染を起こし、症状が悪化することがよくあります。特に野良出身の猫は、冬場や体調が良くないときに上部呼吸器系の感染症を発症することがありますが、定期的なワクチン接種で症状を緩和できます。私は室内飼いでもワクチンの接種を勧めます。室内飼いの猫は免疫能力が低く、ワクチンなしで動物病院に来るとウイルスと接触・感染する可能性があるからです、
自宅では室内の温度と湿度管理が重要です。体温が下がると免疫能力が低下します。空気が乾燥すると気道の粘膜の働きが弱くなり、病原体の処理排泄ができにくくなります。バランスのとれた質の高いフードと歯の衛生管理も重要です。これらの点に留意してしっかり予防していきましょう。
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