【29日付ニューヨーク・デイリー・ニュース】ブロンクス区の刑事裁判所および地方検察局は29日、薬物乱用者に対しては、「罰則より治療を優先する」との方針を発表した。
同区では、薬物乱用を専門に扱う裁判所を昨年12月に開設。規制薬物の不正所持の容疑者52人に対し治療の機会を与えている。また薬物の過剰摂取の回避と回復のためのプログラムを終了した場合は、不正所持罪が却下される。容疑者が治療のため薬物治療施設などに入院中であれば、出廷も免除される。
同裁判所のジョージ・グラッソ判事は「現在、薬物乱用は危機的状況にある。哀れみと治療に重きを置き、命を救うことが最優先」と話した。同区のダーセル・クラーク地区検事長は、「方針変更のきっかけは薬物乱用の実態を伝えた報道だ。既成概念にとらわれず、創意工夫が必要と実感した。薬物使用者を長期的に支援することが肝要だ」と説明した。
同区では2013年1月から17年7月までに、オピオイド系鎮痛薬の過剰摂取で879人が死亡。うち551人は平均8.9回の逮捕歴がある。昨年1年間のニューヨーク市全体の殺人事件による死者は292人だが、過剰摂取死はブロンクス区だけで300人に上る。