「未来の年表」に記された悲観的未来
日本の人口減は、静かに確実に進んでいる。ペットは増えても子供は増えない。その結果、将来なにが起こるかは、もう口が酸っぱくなるほど語られている。
たとえば、昨年は『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(河合雅司、講談社現代新書)がベストセラーになった。この本には人口減少カレンダーが載っていて、それは次のようになっている。
2017年 「おばあちゃん大国」に変化
2018年 国立大学が倒産の危機へ
2019年 IT技術者が不足し始め、技術大国の地位揺らぐ
2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
2021年 介護離職が大量発生する
2022年 「ひとり暮らし社会」が本格化する
2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる
2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国」へ
2025年 ついに東京都も人口減少へ
2026年 認知症患者が700万人規模に
2027年 輸血用血液が不足する
2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる
どうだろうか? この本では、読めば読むほど、悲観的な未来が語られている。私もこれまでに悲観的な本をたくさん書いてきたが、それがここまで現実化してくると、やるせなさを通り越して、なんだか笑うしかなくなってくる。
出生率が2.1を切ると人口は維持できない
人口減社会は恐ろしい。日本ほど急速な高齢化と人口減に見舞われている国は、世界に存在しない。日本ほど100歳以上の人間が多い国も世界に存在しない。
20年前の日本は、40~50歳と 20~30歳の年齢層の人口がもっとも多かった。それがいまでは日本人の約3分の1が65歳以上(高齢者)になってしまった。2025年には高齢化率は30%を上回る。現在、日々 65歳以上の人口は増加し続けているのに、子供の人口は減り続けている。
かつてベビーブームという言葉があった。しかし、これはもはや死語で、いまはその代わりにペットブームである。戦後の日本では「優生保護法」ができ、妊娠中絶が実質的に合法化されて、出生率は低下した。しかし、それでも出生率は2.1を切らなかった。2.1というのは、人口が安定して維持できる最低ラインだ。
ところが、1973年から、日本の出生率は急速に減少し始め、2005年には出生率は最低値の1.26に達した。そして、この年に、死亡者数が出生数を上回るようになった。現在、日本の出生率は約1.46となっているが、このままでは人口はどんどん減り続ける。
モノの生産とサービスの向上を追求しすぎた
じつは、ヨーロッパの主要国もみな人口減に見舞われてきた。そこで、第3世界からの移民を受け入れることで、この問題を解決しようとしてきた。かつて自分たちが出向いて、植民地化した国々から、今度は人々を受け入れているのだ。まさに、「逆植民地化」と言うしかない。
しかし、日本はこれができない。日本人は移民を受け入れない。その結果、この問題はいまのところどうやっても解決できそうもない。現在、日本の人口は1時間に約51人の割合で減少している。
なぜ、私たちはこのような未来を選択し続けてきたのだろうか? どう見ても、暮らしは昔より豊かになったというのに、なぜこうなってしまったのだろうか?
これは、日本社会が物質的な豊かさばかり追求し、モノの生産とサービスの向上に集中し続けてきたからだという説がある。私も、おそらくそうだろうと思う。日本人は、子供をつくり、子孫を残していく幸せより、モノやサービスによる幸せを求めすぎたのだ。
(つづく)
この続きは、2月6日発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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