人手不足でコンビニはAIが運営するようになる
最近、人手不足が叫ばれている。これも、人口減の影響とされている。たとえば、コンビニではバイト募集をしても、応募者が集まらないという。
私の家内の親友は、地方の県庁所在地の都市でセブンイレブンのフランチャイズ店をやっているが、最近は、「中国人もベトナム人も来なくなった」と言う。そのため、息子夫婦に店を手伝わせ、文句を言われ続けている。「儲かる店ではないので、もうやめてもいいでしょ」と息子に言われるが、意地でもやめられないと言う。
コンビニの経営は、人件費が最大の経費で、売上対比で12%~15%を占める。そのため、人件費を上げると、経営はたちまち屈してしまう。しかし、上げなければバイトは集まらず、また、近隣店舗との人材獲得競争に負けてしまう。
いまや、コンビニでのアルバイトは日本人の仕事ではなくなり、ほとんどが外国人労働者に委ねられている。しかし、最近では、その外国人労働者すら集まらない。移民を受け入れるか受け入れないかなどという議論はもはや無意味になった。いまや、日本に来ようなどという移民はほとんどいないのだ。
その結果、コンビニ各社は自動レジ、無人化店舗に向けて新技術の導入を進めている。いずれAIがコンビニを運営するようになるのは確実だ。ローソンでは、最近、「レジロボ」という新しいレジシステムを開発・導入している。これによってレジ業務に必要な人員を削減することができ、これまで店内には最低2人のスタッフが必要だったのが、1人でも運用できるようになったという。
また、昨年11月、JR東日本は埼玉県の大宮駅で、無人コンビニの期間限定の実証実験を行った。これは「Amazon GO」と同じようなAIによる無人化店舗で、顧客は店内の商品をカゴに入れ、店を出るときにディスプレーで金額を確認し、電子マネーのSuicaをかざして会計を済ませるだけで、すべてが完了するというシステムだ。
成長を前提とした過去の経済学は通用しない
こうなると、私たちは今後、AIやロボットと共存していくことになる。そして、そうなれば、社会のすべてが変わるだろう。いままでのような、人間の労働をベースとする資本主義は成り立たなくなる。
日本は人口減を移民で埋めるのでなく、ロボットやAIで埋めていく。そして、それが進むと、今度は人間が余ることになる。すでにフィンテックの進展で銀行や証券は大規模なリストラを始めている。事務職サラリーマンはもとより、弁護士や会計士なども職を失いつつある。人口減だというのに、大失業時代が始まったのだ。
子供の数が減り、ペットとロボット、AIが増えていく。そして、減った人間の何割かが職に就けない。そうなると、おカネが社会に回らなくなるから、社会システムそのものを変革せざるを得なくなる。
もはや、過去の経済学、ケインズから新自由主義まで、まったく通用しなくなっている。それらはみな、人口が増え続け、成長が続くという前提のなかで理論化されたからだ。経済学は、賃金がいらないAIやロボットが価値を創造することを想定していない。
この先、日本はどうなっていくのか? いまのところなにもはっきりとは見えてこない。 (了)
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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