第7回「アレルギー薬」 OTC101ファーマシー探訪 with ひぐち先生

higuchisensei日本の薬剤師・薬学博士で、現在コロンビア大学で博士研究員をする樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身まだ在米2年。米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」

第5回 「筋肉痛の緩和薬」(同じ商品名でも異なる成分!?)
米国で最もポピュラーなNew Year’s Resolutionは「エクササイズ」だそうです。そういえば年が明けると、にわかにジム通いをする人が増えますね。雪かきのシーズンも到来しますので、今回は筋肉痛を緩和する市販薬をおさらいしましょう。同じ商品名でも、パッケージが異なると有効成分と含有量が全く異なります。それぞれの有効成分の効能を知り、賢く選びましょう。

 

①第1世代
昔からあるタイプのアレルギー薬。代表的な商品が「ベナドリル(Benadryl)」、有効成分はディフェンヒドラミン(Diphenhydramine)です。もう1つは、アドビルやタイレノールのアレルギー対応商品で、「Advil: Allergy & Congestion Relief」などがあり、これらの商品の有効成分はクロルフェニラミン(Chlorpheniramine)。いずれの有効成分も鼻水などの粘液分泌を抑えますが、脳(中枢)にも薬が作用するため、強烈な眠気に襲われるという決定的な副作用があります。服用中に車の運転などは絶対にしないでください。即効性があるので、飲めばとりあえず鼻水は止まりますが、効果は数時間しか持続しません。緑内障や前立腺肥大を患っている人は服用してはいけない薬ですので、注意が必要です。

benedryl

「Benadryl」
有効成分と容量
Diphenhydramine 25mg
(抗ヒスタミン剤)

advil

「Advil Allergy & Congestion Relief」
有効成分と容量
Chlorpheniramine maleate 4mg
(抗ヒスタミン剤)
Ibuprofen 200mg (NSAID)(鎮痛剤)
Phenylephrine 10mg(鼻づまり緩和)

 

②脳に作用しにくい第2世代

1980年代以降、処方せん薬として登場した抗ヒスタミン剤ですが、いくつかは処方せんなしで、薬局で買えるようになりました。代表的な商品に「クラリティン(Claritin)」「アレグラ(Allegra)」「ジルテック(Zyrtec)」があります。第1世代と異なり、脳に作用しにくく、少量(1日1錠)で効果が持続します。服用しても眠くなりにくく、継続服用することでさらなる効果が得られます。今すぐ鼻水を止めたいときに飲む薬というよりは、アレルギーの季節を通して予防し、快適に生活するための薬です。第2世代最新商品の「ザイザル(Xyzal)」は、ジルテックの有効成分セチリジン(Cetirizine)から、脳への影響が少なく効果も持続する成分だけを抽出した優れもので、今人気の商品です。

Claritin

「Claritin」
有効成分と容量
Loratadine 10mg(抗ヒスタミン剤)

XYZAI

「Xyzal」
有効成分と容量
Levocetirizine dihydrochloride
5mg (抗ヒスタミン剤)

 

③鼻腔スプレーと目薬

鼻腔スプレータイプのアレルギー薬もあります。代表的な商品は「フローネーズ(Flonase)」ですが、他にもいろいろ。有効成分はそれぞれ異なるものの、すべて免疫抑制効果を持つステロイド剤です。鼻腔スプレーの利点は、鼻の粘膜から有効成分が直接血管に入り込むので、体への吸収が早く即効性があること。経口薬は必ず肝臓である程度代謝されますが、鼻腔スプレータイプはその過程をスキップできるわけです。第2世代のアレルギー薬が効果を発揮するまでの間、併用するならスプレータイプをお勧めします。そして、真っ赤になってかゆい目には、アレルギー用目薬を。「Naphcon A」のように、「A」(AllergyのA)が記された目薬は、抗ヒスタミン剤入りのアレルギー用目薬です。

Flonase

「Flonase」
有効成分と容量
Fluticasone propionate (glucocorticoid) 50mg
(アレルギー症状緩和)

Naphcon

「Naphcon A」
有効成分と容量
Naphazoline hydrochloride 0.025% (充血緩和)
Pheniramine maleate 0.3%
(抗ヒスタミン剤)

※第1世代、第2世代とも、それぞれの商品は容量を抑えた子ども用の薬も販売しており、錠剤だけでなく液体や噛むタイプ(chewable)など子どもが服用しやすい工夫がされています。※これらのアレルギー薬を1週間服用しても症状が改善しない場合は別の原因の可能性があるので、医療機関を受診してください。

※基礎疾患がある人は、市販薬であっても服用時に主治医または薬局の薬剤師に相談を。

知っておきたいファーマシー用語
OTC(Over The Counter)Drug
=一般用医薬品(俗にいう市販薬)。処方せんがなくても薬局で買える薬。
Active Ingredient=有効成分(薬効を示す物質)。薬の箱の裏に明記されている。

樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D. 
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。