IEPと504プラン 連邦法が定める公教育での病気や障害をもつ子どものサポート

 
 連邦法は障害をもつ子どもが公教育を受ける権利を保障し、差別を禁止している。柱となるのはIEP(Individual Education Program)と504プランで、目的は同じだが内容は異なる。特に504プランは発達障害の診断に至らないグレーゾーンの子どもや、スペシャルエデュケーション(特別支援)枠に入らない、うつや不安症などを抱え、学校生活に支障を来す子どもへの配慮を可能にするものである。

連邦法における公教育の定義

 連邦法における公教育とは、連邦政府の資金援助を受けているプログラムを指し、公立学校の子どもは全員この法律の対象になる。 私立学校の場合は、連邦資金の援助の有無により状況が変わってくるため、今回は公立学校での対応に限定して解説する。

障害をもつ生徒にも高い能力を期待

 視力が弱く黒板の字が見えない子どもが眼鏡をかけるように、障害をもつために学校生活に困難を来す子どもに眼鏡に当たるものを提供する、つまり、不利となる部分を補い生徒本来の学力を発揮できるようにすることが教育の機会均等になるとの考え方が基本。
 知的障害がない場合は、一般クラスやアドバンスクラスへの参加や進学の機会が障害によって妨げられるべきではないとする。またスペシャルニーズの子どもを一括りにせず、個々の能力に合ったゴールを決めて個別にサポートすることを定めている。
 支援は、アレルギー疾患や糖尿病をもつ子どもへの投薬、痰の吸引、経管栄養などの医療補助、子どもが落ち着ける環境の整備、スピーチセラピーやフィジカルセラピー、カウンセリング、テスト時間の延長など多岐にわたる。全て公費で賄われ、子どものビザステータスは問われない。保護者の同意が必要で、提示された支援プランに異議を申し立てることもできる。保護者と子どもが主体となって行われるのが、この国の特別支援だ。
 その反面、度を超す問題行動などで他の子どもの妨げになると判断された場合はクラスから隔離し、その生徒に合った学校への転校を計画するなど、学校全体の安全確保を最優先にする姿勢は、日本より厳しいかもしれない。

アコモデーションとモデレーション

 子どもへのサポートには「配慮」であるアコモデーションと「修正」のモデレーションがある。前者はサポートを得ながら一般クラスの子どもと同じ学業や活動を行う。後者は子どもの状態に合わせて学ぶ教材を変更したり、活動を短縮、減少したりすることで、一般クラスの子どもとは異なる内容の学業や活動が許可される。
 例えば、アコモデーションではテストの際、時間延長や少人数の部屋で実施することが可能だが、他の子どもと同じ問題を解く。モデレーションでは、テスト内容を変更したり、他のテストで成績を評価したりすることが可能になる。社交性のスキルアップや、感情面のサポートもアコモデーションに該当する。子どもの状況により、どちらのカテゴリーになるかは支援プランを決めるミーティングで判断される。

 
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IEPと504プランの違い

▽IEP:Individuals with Disabilities Education Act (IDEA)に基づくスペシャルエデュケーションの実行プラン。IDEAは障害をもつ子どもが個人のニーズに合った公的特別支援教育を受けることを保証する教育法。スペシャルエデュケーションを受ける資格がある子ども(スペシャルニーズ)のみが対象になる。
 スペシャルニーズは次のいずれかのカテゴリーの診断が必要となり、これらの子どもには、保護者、学校のスタッフに加え、外部の専門家を含む支援チームが作られ、子ども独自のゴールと支援内容を記載したIEPが作成される。

①自閉症(アスペルガーを含む)②難聴 ③視覚聴覚重複障害(盲ろう)④情緒障害 ⑤聴覚障害 ⑥知的障害 ⑦学習障害 ⑧重複障害 ⑨肢体不自由 ⑩その他(ADHD=注意欠陥・多動性障害を含む)⑪言語障害(失語症を含む)⑫外傷性脳障害 ⑬視覚障害
 
 支援は障害の程度により、次のように分類される。
1.一般クラス
2.関連支援(Related Services=セラピーやカウンセリングなど)を受けながらの一般クラス
3.SETSS(Special Education Teacher Support Services=スペシャルエデュケーションの資格を保持する教諭のサポート付きでの一般クラス)
4.ICTクラス(Integrated Co-Teaching=一般の子どもとの混合クラスで2人担任制。うち1人はスペシャルエデュケーションの資格を保持する教諭)
5.少人数制スペシャニーズのみのクラス(Self-Contained)。公立学校内に設置されるクラスだが、重度の場合は公立特別支援学校 (ディストリクト 75)がある
6.施設での教育。24時間体制でのケアが必要な子どもが対象
7.自宅や病院での教育。健康上、精神面の理由から通学できない子どもが対象。
 また、高機能自閉症児(ADS)を対象にしたプログラム、ADS Nest, ADS Horizonもある。

▽504プラン:Section 504 of the Rehabilitation Actに基づく。各学校区は障害をもつ子どもに無料で適切な公教育を提供しなければならず、障害による差別を禁止する。

 IEPが対象をスペシャルエデュケーションの子どもに限定しているのに対し、504は健康上の配慮は必要だが特別支援の必要がない子どもや、上記のカテゴリーには該当しないがグレーゾーンの子どもも対象になる(IEPは504もカバーするため、重複して持つ必要はない)。504の取得はIEPと比較して認定プロセスもシンプルだ。次回は504について説明する。
(文・河原その子)