ジョンJ. ベルモンテ John J. Belmonte D.C., P.C.
コートランドニューヨーク州立大学レクリエーションセラピー学位取得後、身体障害者セラピーに従事。1991年ニューヨークカイロプラクティック大学卒業。インターナショナル・アカデミー・オブ・クリニカル・アーキュパンクチャー修了。PGA(全米プロゴルフ協会)の医療チームメンバー。1995年、カイロプラクティッククリニック「E53 Chiropractic & Wellness Studio」を開業。
前回は、椎間板ヘルニア治療で行う施術法「コックス技術」について聞いた。人間の体はダメージを受けてから治癒までのプロセスがあり、適切な時期の適切な治療こそが回復への道であると力説するベルモンテ・カイロプラクティック医。今回はその回復と回復後のケアについて聞く。
Q腰や首など体に痛みを感じたときにまずやるべきことは何ですか?
A痛みを感じるということは、どこかに炎症を起こしているということですので、まず炎症を抑えなければなりません。抗炎症剤を使う、冷やす、温める、ハーブやサプリメントの摂取などいろいろありますが、どの方法がその患者の状態に最適であるかは、その痛みが、いつ、どうやって始まったかで個人差があります。
私のところへは、既に病院で椎間板ヘルニアと診断されて来る人もいれば、痛みの原因が分からないで来る人もいます。どちらの場合も、カイロプラクターはまず入念なエバリュエーション(査定)をします。痛みを初めて感じたときや、けがなど痛みの発生原因が明確な場合もです。
Q冷やす、温める、安静など、何が一番良いのでしょうか?
A一言でこれだとは言えません。今はインターネットで何でも調べられますので、専門家にかかる前にネットの情報で自己診断をする人も多いです。しかし痛みの原因はさまざまですので、対処法も変わります。限られた知識は危険です。エバリュエーションをするのはそのためです。個人の症例に合った最適な療法を見つけるためには、自己判断をしないこと。そのために私たちがいます。
Q エバリュエーションでは何をするのですか?
Aこれまでのけがのヒストリー、痛みが起きた状況、本人と家族の病歴、仕事、そして生活習慣を知るための問診、体の可動域のテスト、必要であればレントゲンやMRIなどの画像診断も処方します。すでに病院で撮影したそれらの画像があれば、先に入手して持参できればなお良いですね。それによって痛みがどこから来ているか(椎間板ヘルニアなのか、筋肉か、関節か、または内臓疾患など)の判断をします。その上で炎症を抑えるために、冷やす、温める、電気刺激など、何が最も効果的かを判断します。
Q安静が良いと聞きますが。
A寝ているよりは、無理のない範囲で筋肉は動かし続けた方が良いです。「無理のない範囲」がどの範囲で、どの程度の動きならば今の段階で適切かも、患者さんの自己判断では難しいですね。例えば激痛で全く動けないときに無理に動かす必要はありませんが、2日以上寝たきりにならないようにします。
Q次に大切なことは?
A 椎間板ヘルニアでも他の原因でも同じですが、痛めてから4から6週間の期間、人間の体は自然治癒力で壊れた組織を回復させようとする治癒過程に入ります。この段階が最も重要です。自然治癒だけに任せれば、ヘルニアによって傷んだ組織はそのまま固まります。いわいるscar tissue(瘢痕組織、ケロイドのような傷跡)です。痛みも治まり、治ったような気になりますが、そのような組織は非常に脆いものです。傷んだ組織や椎間板を健康な状態に戻すだけでなく、その健康状態を持続させるための治療が、コックス技術での伸延減圧です。痛みがなくなっても最低4週間は継続して治療を行います。
Q継続が大切なのですね。
A始めは最低でも週に2から3回の施術が必要です。次第に回数は減りますが、保険が効くとはいえ回数が重なれば負担もあるでしょうし、時間を取ることが難しいことは理解できます。しかし再発を繰り返し悪化させないためにも、この期間は辛抱して頑張ってほしいですね。
治療とは、施術に通うだけではありません。自宅でのリハビリや生活習慣の改善を意識し続けることでこそ、カイロプラクティックの恩恵を最大限に得ることができるのです。
Q回復後に気をつけることは?
A特に痛みを感じなくても、椎間板の健康保全のために、年に2から3回の脊椎のチェックが理想的です。脊椎のゆがみは万病の元ですから、カイロプラクティックでの定期的チェックにより、椎間板ヘルニアの再発だけでなく、他の病気やけがの予防にもなります。
椎間板ヘルニアについて、3回にわたる説明をありがとうございました。次回は坐骨神経痛について教えてください。