1400種類もあるうえ
格付けはみな低い
コインチェック事件が起こる前の1月24日、米独立系のレーティング機関「ワイスレーティング」は、世界初の「仮想通貨の格付け」を公表した。
https://weisscryptocurrencyratings.com/btc/why-bitcoin-is-not-an-a-118
これによると、仮想通貨の中で最大の規模を誇る「ビットコイン」の格付けは上から3番目の「C+」(Fair)で、ビットコイン以外の仮想通貨「オルトコイン」の代表格である「イーサリアム」の「B」(Good)を下回っている。
格付けは全部で5段階あり、最高格付けは「A」(Excellent)だが、この格付けを得た仮想通貨は1つもない。A、B、Cの次は「D」(Weak)と「E」(Very weak)となっている。格付けは74の仮想通貨を対象にしているが、そのうちの約7割が「C」だ。以下が主な仮想通貨の格付けだ。
ビットコイン(Bitcoin)C+
ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)C-
ビットコインゴールド(Bitcoin Gold)D+
イーサリアム(Ethereum)B
イーサムクラシック(Ethereum Classic)C
リップル(Ripple)C
ラストコイン(Litecoin)C+
イオス(EOS)B
ちなみに、日本では仮想通貨というとビットコインのことと思っている人が多いが、仮想通貨は現在約1400種類ある。これらの仮想通貨は「オルトコイン」(altcoin)と呼ばれていて、それは「alternative coin」の略称で、直訳すると「代替通貨」となる。これは、ビットコインの代替通貨という意味で、仮想通貨全体の呼称と思っていい。
現在、このオルトコインをどうするか、G20の財務相・中央銀行総裁会議で話し合われるというが、どのようになるかはわからない。ただ、投資家保護の観点からなんらかの国際的規制が行われる見通しだ。
といっても、すでに仮想通貨の世界はどんどん進んでおり、たとえばGoogleが「リップル」への投資を発表したり、日本では三菱UFJ銀行が「MUFJコイン」という仮想通貨を開発すると表明している。
あのジョージ・ソロス氏も
認めるバブル
コインチェック事件が起こる直前、あのジョージ・ソロス氏が、スイスのダボス会議の席上で、仮想通貨について述べたことが注目されている。
ソロス氏は、仮想通貨はバブルだと断言し、ボラティリティが高いため現実通貨としては機能し得ないという見解を示した。そのうえでソロス氏は、今後の暴落の可能性に関しては否定し、「高値持ち合いになるだろう」と述べた。
彼がなにを考えて、こう言ったのかはわからない。ポジショントークの可能性もないとは言えない。ただ、次のように述べたことは、彼の素直な見解であろう。
「(相場が)放物線状に上昇するときは通常、最終的に急激な下落に至る。だが、このケースでは、独裁国家が増える限り、異なる結末を迎えるだろう。こうした国の統治者は海外で資金を蓄えようとビットコインに注目するからだ」
「ビットコインのベースにあるブロックチェーン技術は、今後、建設的に使用される可能性があるだろう」
このソロス氏の最後の見解、「ビットコインのベースにあるブロックチェーン技術は、今後、建設的に使用される可能性があるだろう」は、非常に大事である。
バブルであるかどうかは、大した問題ではないのだ。デジタルマネーこそが今後の貨幣の主役になることを、ソロス氏も認めている。このほうが重要である。
仮想通貨が持つ
大きなメリットとは?
ソロス氏が、仮想通貨をバブルと指摘するのも当然である。2017年の1年間で、ビットコインはなんと20倍以上になったからだ。
ビットコインは、2017年1月には1000ドル前後だった。それが10月には6000ドルを超え、12月には2万ドルに達したのである。こうなると「バスに乗り遅れるな」と、投資マネーが殺到する。では、仮想通貨への投資は、バブルだからという理由だけで行われてきたのだろうか?
バブルにおいては、相場が熱狂的になればなるほど、参加者が激増する。誰もがいつかは弾けるとわかっていても、自分だけは逃げられると信じているからだ。バブルは、簡単に言えば、自分よりも高値で買ってくれる人を見つけるゲームだ。バブルが続く限り、このゲームは成立する。仮想通貨投資はいまのところ、確かにこれである。
しかし、仮想通貨にここまで投資が集まったのは、当初は、それに見合う価値があると思われたからだ。先端のテクノロジーを駆使したマネーとして、世界的に普及すると信じられたからだ。実際、仮想通貨には、次のような大きなメリットがある。
(1)個人間、企業間で直接送金できる
(2)手数料が無料か格安
(3)監視や制限が存在しない
(4)取引の透明性、信用性が保証される
(1)は、仮想通貨は銀行などの金融機関を通す必要がないので、当事者同士が直接行えるということ。たとえば、金融機関が開いていないときでも一瞬にして可能だ。
(2)は、(1)でわかるように間に金融機関が入らないため、銀行送金、クレジットカードの支払いなどの手数料がいらなくなるということ。
(3)は、(1)と(2)と同じで、決済が金融機関を経由していないので、それに関する煩わしい手続きや制限が一切ないということ。
(4)は、これがもっとも重要なのだが、仮想通貨は「ブロックチェーン」というデジタル技術に支えられて発行されているということ。
ブロックチェーンとは、簡単に言えば、ネット上の取引台帳である。この技術では取引履歴が記載された情報を暗号化し、そのデータをインターネットに接続された個々のコンピュータに保存して、取引のたびにデータを付け足していくことが行われる。そうして、データは分散して保管されている。したがって、これを改ざんすることは事実上不可能のため、透明性と信用性が保証されるというわけだ。 (つづく)
この続きは、3月6日発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。
【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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