摩天楼クリニック「ただいま診察中」(連載38) カイロプラクティック治療 【10回シリーズ、その5】坐骨神経痛(上)

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ジョンJ. ベルモンテ John J. Belmonte D.C., P.C.
コートランドニューヨーク州立大学レクリエーションセラピー学位取得後、身体障害者セラピーに従事。1991年ニューヨークカイロプラクティック大学卒業。インターナショナル・アカデミー・オブ・クリニカル・アーキュパンクチャー修了。PGA(全米プロゴルフ協会)の医療チームメンバー。1995年、カイロプラクティッククリニック「E53 Chiropractic & Wellness Studio」を開業。

前回まで3回にわたり椎間板ヘルニアについて、原因、症状、治療方法、気をつけるべきことを聞いた。椎間板ヘルニアに次いで腰の痛みで思い浮かべる人が多いのが坐骨神経痛だ。長く座っていられない、おしりから脚にかけて痛みやしびれの出るつらさを経験している人も多いだろう。「坐骨神経痛と診断はされますがそれ自体は病名ではなく、さまざまな原因によって生じる神経痛の症状です」と話すのは、ベルモンテ・カイロプラクティック医。今週からは2回にわたり原因と治療、ケアについて聞く。

 

Qまず坐骨神経について教えてください。
A坐骨神経は、人体のなかで最も太く長い末梢神経です。腰から足のつま先まで伸びています。椎間板ヘルニアで説明したように、脊柱(背骨)は椎骨と呼ばれる1つひとつの骨が積み重なってできています。上から「頚椎(7個)」、「胸椎(12個)」、「腰椎(5個)」、「仙椎(5個:5個の椎骨は融合して1つの骨「仙骨」になる)」、「尾骨」と分かれます。
 椎骨は円柱部分の「椎体」と、背中側につき出た「椎弓」と呼ばれる部分に分かれています。椎体と椎弓の間には穴が空いたような空間がありこれを「椎孔」と呼びます。椎骨が積み重なっているので、この椎孔は上から下まで続いてトンネルのようになります。そのトンネルの部分を「脊柱管」と呼びそこに脳の延長として伸びる神経の束、中枢神経の一部である脊髄が通っています。この脊髄から、 抹消神経である脊髄神経が各椎骨の間から体の各所に伸びていきます(左下の図参照)。そのうち腰椎の下2つ、第4腰椎、第5腰椎、仙骨の上3つ、第1仙椎、第2仙椎、第3仙椎から伸びる神経がまとまって、1つの太い神経となり足先まで伸びているのが坐骨神経です。

 
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Q坐骨神経痛とは?
Aこの坐骨神経が、なんらかの原因で刺激(irritate)を受けることで、神経や周辺の筋肉に炎症が起きて痛むのが「坐骨神経痛(sciatica / sciatic neuralgia)」です。主に腰から足に向かって痛みやしびれが出ます。 最初は腰痛から始まることが多く、その後お尻、太ももの裏、ふくらはぎ、足、指先へと坐骨神経の通り道に沿うように症状が出てきます。痛む場所も人により違います。痛みの進み方もあっという間に腰から下方へ痛みが伝わることもあれば、緩慢に悪化する場合もあります。

Q痛みの特徴は?
Aしびれるような感覚、ヒリヒリとうずく、ひやっと氷を当てたように冷たく感じる、火を当てたように熱く感じる、電気のようにビリビリと痛みが走る。 長時間座ることがつらい場合や、立ち上がるときに痛むこともあります。また深刻な場合は足の筋肉が弱まり、足が動きづらくなることもあります。

Q原因は何ですか?
A原因はいろいろありますが、坐骨神経の始まりである腰椎と仙骨の背骨などに原因がある場合や、事故やけがなどのトラウマ(外傷)で神経に損傷を負うなどの外的原因に大きく分けられます。

Q代表的なものは?
A椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などが代表的な原因としてよく知られています。椎骨の関節炎や、お尻や足の筋肉の炎症で坐骨神経にストレスがかかり、痛みが発生することもあります。また坐骨神経痛は体の片側に出る傾向がありますが、左右にも生じる場合もあり得ます。 ここで大事なことは、痺れなど症状が坐骨神経痛と似ているために、坐骨神経痛と誤解されやすい病気があることです。

 
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Q例えばどんな病気ですか?
A大まかに言いますと抹消精神系障害(ニューロパチー)の種類に当てはまります。抹消神経の正常な伝達機能に障害が出て、運動能力や感覚などに障害が起き、しびれや麻痺が出ます。足腰にそれが出ると、坐骨神経痛と思い込んでしまう人もいます。糖尿病や、ブラッドクロット(血餅。血餅が血管に張り付くのが血栓)、筋肉や神経の炎症、腫瘍などでも同じ症状が起こる可能性があります。痛みが整形外科的な病状に起因するものなのか、それ以外の神経科、内科的なものが原因なのかの判断は重要です。カイロプラクティックは、エバリュエーションによってそれを見極める訓練を最も積んでいるといえます。痛みを自己判断せずに、早期に専門家の判断を仰ぐことが肝要です。

 つらい坐骨神経痛の痛み、次回は痛みの原因ごとの治療法とケア、予防について教えてください。