元気の道しるべ Story 8  【 蓄膿症】永塚淑恵さん(41)

元気の道しるべ Story 8
病気になって初めて気づくこと、始めた習慣、出会えた人。
病気をプラスに捉えたら、人生が違って見えてくる。焦らず慌てず生きましょう。

心や体の黄信号を無視せず
早めの対応を心掛ける

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【 蓄膿症 】
永塚淑恵さん(41)
ニューヨーク市クイーンズ区在住

 9年半勤めたマンハッタンの自然療法センター本草閣を昨年12月に退社し、次なる挑戦を模索しながら現在は充電中という永塚さん。人生の転換期を迎えたこのタイミングに自身の経験を話すことで、誰かの役に立てればと、今回の取材を快く引き受けてくれた。

花粉症と冷え性に悩む
 子どものころから健康に恵まれて育った永塚さん。中学3年生のころからスギ花粉によるアレルギー症状に悩まされるようになったが、それ以外は、これといった問題がなかったという。
 状況が変わったのは、ニューヨークに住むようになり、知人から譲り受けた生後2か月の猫を2匹飼い始めた1997年の秋ごろ。猫と暮らし始めて2カ月ほど経ってから目がかゆく、常に鼻をすするようになったのだ。花粉症もちだった永塚さんは「いつものこと」と我慢、それでも5年後には一度検査をしようと思うほど悪化していた。結果は、ダニとほこりのアレルギー。カーペット敷きのワンルームに猫2匹の生活が原因だった。加えて、「2007年ごろに勤めていた会社の席がクーラーの真下で、夏は勤務時間中ずっと全身に冷たい風を浴びていました。温かい飲み物を飲んでもすぐに寒くなるほど冷え性になっていました」というが、会社に席替えを訴えることもせず、ここでも我慢を続けた。2匹の猫とも同居は続けていた。

蓄膿症と診断される
 当時の永塚さんは常に鼻がつまった状態で、英語をうまく発音できず、職場で電話に出るのも苦労したという。右の鼻に膿が溜まっていて不快感があり、「顔を丸ごと洗ってスッキリさせたい」と思うほど困り果てていた。
 マンハッタン区にある大学病院を受診したところ、抗生物質を2週間分処方された。それでも改善しないと言うと今度は、同じ医師から別の抗生物質を処方された。そのころには痛みはないのに下痢が続くお腹の不調が起こり、再度医師を訪れて、「鼻づまりは治らないし、最近は腸の調子も悪い」と訴えた。医師の答えは「胃薬を買って飲みなさい」だった。
 次々と違う種類の抗生物質を処方されたが症状は改善しない。それどころか胃腸が悪くなった。医師に対する不信感は募るばかりだった。「CTスキャンを見ながら『この白い影が膿だよ』と蓄膿症の太鼓判をされましたが、CTスキャンを見せて説明されなくても、私自身が鼻の中の膿の匂いも知っているし、痛いし、とうの昔から(蓄膿症だと)分かっていました」

自然療法と出会う 
 蓄膿症回復の兆しは見えず、残る手段は手術だけと言われた。しかし手術をしても、ほとんどの場合、3カ月ほどで再発するとも聞かされた。また、ステロイド系の抗アレルギー注射を毎週1回1年間続けなければいけないと言われた。永塚さんは、「抗生物質で胃腸がおかしくなったのだから、アレルギー注射で健康になれるとは思わない」と懐疑的だったが他に選択肢もなかった。
 手術に向けて準備を始めた3カ月後の
07年12月、知人から紹介された自然療法センター本草閣を訪ねた。同センターの先生は、脈診により永塚さんの全身の状態を診断し、肝臓と腎臓が疲れて弱っていると説明してくれた。そのときのことを永塚さんは「全部、腑に落ちる感じでした」と振り返る。処方された約30種の薬草で調製された煎じ薬を飲んだら、すぐに1日3回の便通があり蓄膿症は次第に良くなっていった。迷わず手術をキャンセルした。
 大学病院の耳鼻科で処方され服用していた抗生物質の影響で両手の人差し指に水泡ができて悩んでいたが、漢方薬を飲み始めて数日でそれも消えた。先生いわく「人差し指は胃腸の指である」。永塚さんは、「その通り」と、膝を叩く思いだった。「先生に出会うまでは、処方される薬の種類が増えるだけで回復せず、それどころか薬の副作用にも悩まされ、まるで出口の見えないトンネルの中にいるようでした。先生に診てもらうようになり、回復のために自分自身でできることがたくさんあることを知り、食事の改善、生活環境の見直し、特に体の冷えには気をつけるきっかけとなりました」

心と体の日常の黄信号をキャッチする 
 自然療法と出会い、体調を回復したことをきっかけに08年6月から9年半、本草閣のスタッフとして勤務、昨年末に退社した。蓄膿症になったことで、いろいろな気付きがあったという。
 「ストレスがあるときは、誰でも物事があまり見えなくなってくるものですよね。忙しくしているときこそ、一度立ち止まってみたり、人から言われることも気にしてみるのが大切」と教えてくれた。親や友達に言われること、例えば、「ちょっと疲れていない?」「最近発言がネガティブだよ」など、いろいろな場面で気付かせてくれようとしているので、それらの忠告に耳を傾けることが、まず大切だと。「そういうときに、『大丈夫、大丈夫』と言って受け流し、自分の体の声を無視していると、心と体が折れて反乱を起こすのです。体は素直なんですよね。これまでにたくさんの患者さんにお会いした経験から、重症になってからでは大変なことを知りました。心や体からの黄信号に気が付いたなら、早めの対応を心掛けてください」

昨年9月に訪れたマウイ島で。「大自然を感じ、ビーチから海を見るだけで癒され幸せでした」

昨年9月に訪れたマウイ島で。「大自然を感じ、ビーチから海を見るだけで癒され幸せでした」

永塚さんの元気の道しるべ
❶ 少食、休息、ストレス解消などで、
  早めに心と体の微調整をする
❷ 楽しいことは即実行して、先延ばしにしない
❸ 小さなことに感謝して毎日を過ごす

取材・文/渡辺奈月 ヘルス&ウェルネス・コンシェルジュ。米国でファンクショナルメディスン(機能性医学)を学び、ヘルスリトリートにも多数参加。自らの体験も含め知見を深めながら健康や心のあり方に関する情報を発信し、子どもから高齢者まで健康指導も行う。ブログhttp://gogonatural.weebly.com