第10回 ムギ&コメと青木恵子さん

 亡き「ベニハナ・オブ・トウキョウ」創業者のロッキー青木さんがこよなく愛したムギ。ムギに救われてその死から立ち直った妻の恵子さんは、日本からコメを迎えました。

 

青木恵子さん(ベニハナ・オブ・トウキョウCEO。マンハッタン在住、NY在住27年)ムギ(写真右12歳の雄、ウィートンテリア)とコメ(4歳の雌、マルチーズ)

青木恵子さん(ベニハナ・オブ・トウキョウCEO。マンハッタン在住、NY在住27年)ムギ(写真右12歳の雄、ウィートンテリア)とコメ(4歳の雌、マルチーズ)


 

——ムギとの出会いは?
 私の初代ムギが9歳で死んだとき、親が死ぬときにも泣かなかったロッキーさんが泣いてね。すごく落ちこんで、すぐにムギと全く同じ犬を飼おうって言ったんです。ムギを購入した店で私が同じ犬種で雄の子犬を見つけたんだけど、彼はムギと同じ雌じゃないと嫌だって言い張るの。しばらくしてまた店をのぞいたら、その子はケージの中で立てないくらい大きくなっていて、これはすごい虐待だと思いました。
 会えば彼も絶対飼いたくなると思い、一緒にその店に行ってみました。彼がその子を抱っこした瞬間に、店員が「半額でいいわよ」って持ちかけたら、「オーケー!じゃあ買うよ」って即決(笑)。でもその後が大変で。7カ月も狭いケージの中にいたので後ろ足が上げられず、車や光をこわがって全く歩かない。しかも大きくしないために、餌を食べないように飼い慣らされ、水ばかり飲むの。1カ月トレーナーに預けて、やっと普通の生活ができるようになりました。

——ロッキーさんが亡くなられてからはどうでしたか?
 ロッキーさんはムギと一日中一緒でしたが、容体が急変して救急車で運ばれ、そのまま逝ってしまいました。だからムギは今でも散歩のときに、後ろ姿が似ている男性を見るとついて行こうとするの。10年たった今でも彼を探していると思います。
 彼はカントリーハウスに行くと、ムギをボートに乗せてよく釣りに行っていたので、今でもそのボートが来ると追いかけて行くの。ボートが通りすぎると、肩を落としてとぼとぼ帰って来る姿に涙したものです。
 彼が亡くなって私が泣いているときに、そばに座って涙を全部なめてくれて、人生で一番大変なときに立ち直れたのはムギのおかげでした。それをきっかけにNPO法人を立ち上げ、動物がいかに人間の役に立っているかをテーマにドキュメンタリー映画を製作しています。105歳で亡くなった尊敬する聖路加病院の日野原重明先生が、「人間の10歳のときの記憶は大人になっても残る」とおっしゃっていたので、制作した映画を小学校に配っています。

 

ムギとコメのために、毎日ごはんを手作りしてくれるお手伝いのアンジェリカさんと

ムギとコメのために、毎日ごはんを手作りしてくれるお手伝いのアンジェリカさんと


 

——コメとの出会いは?
 日本にいる母親がうつ病になってしまったんですが、コメを贈ったらすっかり症状が良くなったんです。ところが後でそのマンションは犬禁止と分かり、2歳のときに引き取って連れてきました。

——恵子さんにとって2匹はどんな存在ですか?
 家族です。家族のように私を一番癒してくれる存在。一緒にいて大変なこともありますが、プラスとマイナスで考えると絶対プラスですね。

 
 

【 教えて!シンゴ先生 】

アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。

3876
 
 
添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。
 
 
 

Q ペットの歯の病気について教えてください。

  A 2月は「ペットの歯強化月間」でした。人間同様、犬猫の歯の状態は体全体の健康に影響します。ペットの寿命が延びた現在、歯の健康とペットの健康寿命には密接な関係があるとされています。また歯の問題で動物病院を訪れる飼い主は、年々増えているようで、成犬や成猫の80%以上に歯の病気が発生しているとの統計報告もあります。
 ペットに口臭があると感じたら、歯肉炎や歯周病が発生しているかもしれません。歯周病が進行すると摂食時に痛みを伴い、食欲や飲水量の低下を招きます。そうなると脱水症状を起こし、それがもとで食欲の減退を招き重度の脱水状態に陥ることがあります。また歯周病の細菌が血流に乗って心臓や肝臓、腎臓に運ばれて、細菌性の病気を起こす可能性があるといわれています。
 予防にはまず歯磨きです。それには、飼い主がペットの口に指もしくはブラシを入れないといけません。ブラシが難しい場合は、指にガーゼを巻いて口の中に入れ、歯を感じながらマッサージするつもりで行ってください。毎日少しずつ行うことで、飼い主もペットも慣れてくるかと思います。またウェブサイトなどで皆さんが工夫していることなどを調べて、自分とペットに合ったやり方を見つけるのも良いでしょう。
 しかし一度ついた歯石は歯磨きで落とすことはできないので、動物病院で麻酔下での歯石除去(デンタルクリーニング)を行うことを勧めます。このあとに自宅で定期的に歯磨きをすることで、歯の健康をより長く保つことができます。まずは獣医でペットの歯の診断をしてもらい、今後の方針を立てましょう。