米国日本人医師会と日本クラブは22日夜、マンハッタン区の日本クラブで第42回ヘルスセミナーを開催した。日本の薬剤師・薬学博士で、現在はコロンビア大学博士研究員の樋口聖さんが「脂っこいものはなぜおいしい〜満腹のメカニズム」と題して講演した。樋口さんは本紙で「OTC101〜ファーマシー探訪」を連載中。
樋口さんはまず、脂っこいものを食べると多幸感に包まれるのは、脳内のカンナビノイド受容体が大きく関係しているとして、その仕組みを解説。同受容体阻害薬が肥満薬として一時発売されたが自殺願望などの副作用から発売中止になったと紹介。「食欲を奪うということは人間の喜びを奪うこと。脳に直接作用する薬は危険」と話した。次に、食物摂取により「第2の脳」とも呼ばれる腸から血中に放出されるインスリン分泌促進ホルモン、インクレチンの働きと、それを利用した薬の開発について解説。最後に、遺伝子操作をしたマウスを使っての、自身の休みのない「胆汁酸研究の日々」のエピソードと共に「地道な作業が不明なことを明らかにする」と結んだ。参加者の「炭水化物ダイエット」についての質問には、「体内ではいろいろなシステムや臓器が助け合って働いている。基礎研究者の立場から極端なダイエットは疑問」と答えた。