2018.03.30 COMMUNITY コミュニティニュース

どう考える? あなたと「#MeToo」ムーブメント

ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインによる女優へのセクハラが昨年10月に告発されたのをきっかけに広まった「#MeToo(私も)」ムーブメント。「私も被害に遭った」と告白する女性が後を絶たず、身近にたくさんの被害があったことが分かってきた。

「伊藤さん事件」に何を学ぶか
 3月15日、NY日系人会である講演が行われた。ゲストスピーカーとして登壇したのは伊藤詩織さん。昨年5月、TBSの元ワシントン支局長、山口敬之さんから「レイプ」されたと訴えた人物だ。報道によると、就職相談のため山口さんと2人で食事をし、酒に酔い(伊藤さん側は何らかの薬を飲まされたと主張)、その結果、「レイプ」されたという。いわゆる「デートレイプ」(顔見知りからの性的暴行)だ。伊藤さんは被害届を出したものの、山口さんは不起訴、検察審査会でも「不起訴相当」との議決が下された。現在は精神的被害を訴え民事訴訟を起こし、係争中。
 この日、オレンジ色のセーターに細身のジーンズ姿で、落ち着いた表情で登壇した伊藤さん。「ごく普通」の20代の女性が原告となった同事件について、第三者の立場からはどちらの主張が正しいか判断することはできない。ただ、この事件や伊藤さんの行動から何を学べるかに着目した。もし伊藤さんが主張している状況に置かれた場合、世の中の女性はどう感じ、どのような行動をとり、自分を守るのか。また、セクハラに敏感な現代において気をつけるべきことは何か—。取材を通して浮かんだ疑問を基に実施した女性への意識調査から、見えてきたことがある。

女性の意識調査
 「#MeToo」ムーブメントについて考えるため、本紙では20代から70代の日本人女性70人に4つの質問に答えてもらった。また、日本人と米国人の男性計15人に、男性側の意見を聞いた。先入観を避けるため、いずれの質問も「伊藤さん事件」関連に使用するとは伝えていない。

Q1 仕事をもらうために、妻子持ちの男性と2人で飲酒を伴う食事をしますか? またはしたことがありますか? (註)
(註)男女ともに未婚だった場合「職場恋愛」に発展することも考えられるため「妻子持ち」というハードルを設定、またビジネスランチ(飲酒したとしても少量)や喫茶店での打ち合わせは日常的に行われるので、飲酒の有無も限定した。伊藤さんと山口さんのケースはこれに当てはまる。

metoo_1

する
【20代】
したことはないけど、自分がビジネスをしていたら仕事をもらうためにはすると思う▽仕事を得るためにというのは今までないけど、フリーのカメラマンだったら全然行くと思う▽コミュニケーションが取りやすいし、誘われたならコネクションを作る良い機会だと思う。また、いざとなったら自分の身を守る方法は知っているから。実際に食事に行ったこともある▽仕事上のお話でしたらします。ビジネス関係でしたら問題無いと思います
【30代】
するが相手を信用できる場合のみ▽仕事関係であれば基本する。会食も信頼関係構築のコミュニケーションだと理解しているため▽妻子持ちかどうかに限らず、仕事に関係する人と仲良くなれば飲みに行くことはありますし、そこに線引きはしません▽仕事がほぼ決まってたら食事するけど、仕事をくれるような素振りだったらどうかな~。ミーティングならオフィスでいいんじゃないかな~。まあとりあえず行くかな▽仕事がもらえるなら食事します▽食事行きます▽仕事ならする。接待はそういうもの▽経験はないが、そういう状況が起こればすると思う。理由:「仕事をもらうために」だけではなく仕事上有益な情報を得るため、有益な人間関係を築くために、男女関係なく飲酒を伴う会食を行うことはあると思うから▽食事なら問題ないと思うし、もちろん相手にもよる▽行きたくはない。自分の父親がそんなことしてたらキモくて軽蔑する。しかし上客なら断れず行くこともある
【40代】
仕事の話なら。ただし、そもそも仕事にかこつけただけのおさそいなら行かない▽仕事の件でのミーティングならあり得ると思う▽仕事の付き合いなら仕方ないかな
【50代】
食事が仕事に関係あるのなら「はい」。妻子持ちであるかどうかは仕事には関係ないけれど、用心はする、と思う。仕事に関係はなく、親しくなるチャンスということなら「いいえ」▽純粋に仕事の打ち合わせや打診の詳細を聞くという意味ならランチまではあります。今後もします。ディナーはしません
【60代】
若いころ、東京で働いていたときに何回もある▽ただし、初対面の人とは行かない▽オフィスでの面接じゃない縁故就職なら、そういう場が必要でしょ。先方が採用の決定権を持っているなら行く

しない
【20代】
ありえない▽仕事のミーティングなどでご飯を食べに行き、それが仕事のステップアップにつながるなら行く。(しないけど、普通にご飯食べに行く事→なんかミーティングとかで、それが次の仕事なんかステップアップ的な?に繋がるならそれって仕事もらうってのに入るの??)▽その人自身に興味がなければ行かない▽仕事をもらうのに食事は必要ないからしません! もっと自分の実力を評価してくれる仕事がしたいです▽したことはないし、しない
【30代】
昔は行ったが、相手の家族はどう思うだろう、と考えるようになりました。まず既婚者は異性と2人で飲みに行くこと自体があんまり良くないことだと思っています。2人が本当の友達だとしてもお酒が入ることだからどうなるかわからないし、周りから見られて、尾ひれがついて誤解されて接されるかもしれないから▽お酒が入ると、冷静な判断ができなくなる。前に、キャリアフォーラムですごく気に入ってくれた面接官がいて、就職助けてくれるってご飯に誘われたんだけど、怖くなって行かなかった! 妻子持ちかは知らないけど、ボランティアしてるわけでないし、向こうも何か(下心とか)ないと、わざわざ奢ってあげて、時間も割いて、とはしないかなと思う。下心があったら怖いから行ないという自己防衛▽こっちが立場的に下手ってことだよね…できれば避けたいかな▽仕事のためでも基本2人で飲みには行かないかなー。面倒くさいことになったら嫌だし。大勢の飲みとかで地道にポイント稼ぐ笑▽「仕事をもらうため」にはしませんが、「仕事を円滑に進めるため」に行く必要があれば行きます。まるで気は進まないので、基本的には行きません。行く場合も、他の人を誘うようにします▽いいえ。食事をする場合は必ず同僚を誘ったりします▽良い提案があるとは思えないから▽既婚関わらず仕事での個人的な飲みはしないから。今の状況で言うと会社的にもNG▽時と場合による。仕事をもらうため?にはあまりしない。仕事の都合上ならよくある▽したことはありません。今後の可能性については、相手の方との関係性にもよると思いますが、仕事として割り切ってできるのであれば行くと思います。ただ、相手による圧力的なものが発生した場合は、行かないです▽時と場合による。通常はやはり上司や同僚も同席です▽下心あるだろうし、危険な感じだから▽食事は男女関係なく自分が楽しいと思う人と行くので、仕事をもらうためには行かない。
仲良くない人と行くのはめんどくさい▽それは、これまでそういうシチュエーションが恐らく一度もなかったから。今後は分かりません
【40代】
飲酒なしのランチならあり▽ほとんどないです。極力、避けるようにしています
【50代】
20代のころ、仕事がらみで誘われ断れず。お決まりのセクハラコースとなった。自分が愚かだったと痛く反省、学習した(相手の男はやりすぎて業界から追放された)
【60代】
仕事もらうためにはしない
【70代】
ない。職種にもよると思う。アメリカの映画界で最近あった事件でクローズアップされ、MeTooの運動が広がったことはとても良いことだ。おかしいと思ったら声を上げること

デイリーサン的EYE
「する」と回答した女性ほど、自分を守る方法を心得ており、しっかり者が多い。また、仕事であれば仕方ないと思う人や条件付きで「する」の人も。「しない」の人はポリシーとして営業時間外に接待しない、2人きりになった場合の危険性を常に想定している、との考えが多数。「する」との回答が予想される伊藤さんがどのような防衛策を持っていたのかが気になるところ。

Q2 1のような状況で、男性側に下心はあると思いますか?

metoo_2www.nyscasa.org)
NY州のガイドライン www.troopers.ny.gov/Crime_Prevention/Violence/Date_Rape/

編集後記
本紙記者、30代、女性
 伊藤さんの講演に男性の参加者が少なかったのが残念だ。男性から女性へのセクハラ撲滅を目指すなら、男性こそ被害者の気持ちに触れるべき。被害に遭った後に「声を上げろ」では遅い。伊藤さんたちのような活動家にはぜひ、同時に予防策を広めていただきたい。
本紙記者、20代、女性
 伊藤さんの訴えを巡っては主張が食い違い、地に足がついた議論が少ないのが気がかりだ。しかし声を上げることは大切だ。傷ついた人が助けを求める場所があり、支援を受けられる社会であってほしい。伊藤さんの活動がその構築へのきっかけになれば、意味があるのではないか。

アンケートにご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。

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