トランプの自信過剰が墓穴を掘る可能性
それでは話を、この連載のテーマである「米中対決時代」に絞って、以下、まとめていきたい。
フェイスブック・ショックに続いて、トランプの「鉄鋼・アルミ関税」が発動され、さらに対中制裁関税も発表された。このダブルショックで、先週、NYダウは暴落した。
しかし、スティーヴン・ムニューチン財務長官が中国との交渉で妥結点を見出せる考えを表明すると、米中貿易戦争の懸念が和らぐとして、3月26日のNYダウは669ドルも戻した。
トランプ政権で対中強硬派(ドラゴン・スレイヤー)が力を握り、制裁関税により対決姿勢を強めたというのに、ムニューチンの姿勢はいただけない。さっそく、中国ものってきて、米中貿易交渉が始まると伝えられた。となると、これは日本にとって最悪の展開になりかねない。
何度も書くが、日本は米中が2大強国となって、世界を支配する時代になることがもっとも困るからだ。
したがって、ここはトランプ政権のドラゴン・スレイヤーたちにもっと頑張ってもらわなければならない。フェイスブックのようなIT企業には、中国に秋波を送ることをやめてもらわなければならない。
中国人は、われわれ日本人と違ってしたたかである。トランプは、自分はディールが得意だと思っているようだが、そういう“オレさまはすごい”意識が墓穴を掘る可能性がある。
昨年11月、トランプは初訪中し、習近平主席から史上最大級の歓待を受け、おまけにビッグすぎる手土産までもらった。習近平は、航空機や半導体から農産物まで、アメリカ製品を、なんと総額2500億ドルも買うと表明したのである。
しかし、これは契約ではなく単なる「覚書」だった。いつ買うのかはまったくわからないうえ、もしかしたら口先だけの可能性もある。
中国ビジネスにおいては、たとえ契約して取引しても、代金が支払われるまでわからないというのは常識である。
思いやられるムニューチンの年下セレブ妻
はたして、「米中対決時代」は本当にやってくるのか?
最後に、ムニューチン財務長官について述べて、今回の記事の締めとしたい。
ムニューチン財務長官は、ユダヤ人銀行家の家に生まれたエリートで、ゴールドマン・サックスの共同経営者をへて自身の映画会社をつくり、その後、トランプに請われて政権入りした。その出身、キャリアから見て、中国のパワーエリートたちと十分やりあえると思える。しかし、彼には大きな弱点があるのだ。
2014年に前妻を捨てて再婚したスコットランド出身のハリウッド女優ルイーズ・リントン(36)である。この年下妻(ムニューチンより18歳年下)は、いまでは“ワーストレディ”として、夫より有名である。というのは、インスタで金ピカぶりをひけらかして庶民の怒りを買ったからだ。
昨年8月、彼女は夫の公務に同行してケンタッキー州に行き、ここで政府専用機から降りる姿をインスタに投稿した。この写真に、価格が1万ドルを超えるエルメスのバーキンと見られるハンドバッグが写っていた。さらに、彼女は身に着けていたローラン・ムレ、トム・フォード、ヴァレンティノなどの高級ブランドに、ブランド名をひけらかすようにハッシュタグを付けていたのである。
これを見て怒ったオレゴン州の1人のユーザーが、皮肉を込めて「あなたの休暇のお支払いが一部でもできて嬉しいです」というコメントを付けた。すると、リントンは、こう反撃した。
「やだ! あなた、これが個人的な旅行だとでも思っているの? そうだったらいいわね! アメリカ政府が私たちのハネムーンやプライベート旅行の代金を負担してくれると思った? 笑笑笑!」
さらに、こう続けた。
「あなた、私や夫ぐらいこの国の経済に貢献したことあるの? 個人としての納税額、または国に対する自己犠牲として? 私たちのほうが間違いなく、あなたよりもたくさん税金を払っているわよ。あなたはおめでたいほど的外れね。こういう攻撃的なコメントを送っていい気持ちになれると思ったの。もうちょっと知性やユーモアがあったらよかったわね。楽しい夜を過ごしてちょうだい。頭を冷やして、『ゲーム・オブ・スローンズ』の新シーズンでも見たら? 最高よ」
ここまで納税者をバカにしたら、炎上するに決まっている。この炎上に巻き込まれたヴァレンティノやトム・フォードはすぐに「衣装の提供をしたことはない」と関係を否定した。もちろん、彼女のインスタグラムは即座に削除され、翌日、リントンは謝罪した。
はたして、トランプとムニューチンのコンビが、本当に中国とイーブンで渡り合えるだろうか? はなはだ疑問だ。
(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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