第9回「整腸剤」 OTC101ファーマシー探訪 with ひぐち先生

higuchisensei日本の薬剤師・薬学博士で、現在はコロンビア大学博士研究員の樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身、在米3年が経っても米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」

第9回「整腸剤」
お腹の調子を整える、「腸」に働く薬と「便」に働く薬

公衆トイレが少ないニューヨーク。外で急に激しい便意をもよおし、冷や汗をかいた経験がある人も多いのでは? 一方で、スッキリできない便秘も不調やストレスの原因になってしまいます。過敏すぎるお腹、なかなか働いてくれないお腹など、お腹のSOSに効く「腸」に働きかける薬と「便」に働きかける薬を学びましょう。

「下痢止め」

腸の働きをスローに or 腸壁を守る
下痢止め(anti-diarrheal)は、胃腸の働きを遅らせる成分、ロペラミド(Loperamide)含有の「Imodium」などがあります。さまざまなタイプがあり、嚥下障害のある人や高齢者などは液体タイプが飲みやすいですが、雑菌が入りやすいので長期保存には向かないでしょう。また、ピンク色の液体や錠剤で販売されている「Pepto-Bismol」は、本コーナー第1回目の「胃薬」にも登場しましたが、下痢止め効果もあります。有効成分の次サリチル酸ビスマス(Bismuth subsalicylate)が粘膜を保護し炎症を抑えるため、大腸への刺激が軽減され、胃腸の動きを整える仕組みです。ただし、子どもにはお勧めしません。菌やウイルスに感染して下痢になった場合は体内から菌を排出させるため、下痢止めを服用してはいけません。
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「便秘薬」

①便を柔らかくする非刺激性

副作用もほとんどなく、米国で最もよく飲まれる便秘薬の1つが「MiraLAX」。これは浸透圧性下剤といって、有効成分のポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)が腸内にたくさんの水分を取り込むことにより、便を柔らかくし、排出しやすくするものです。「Phillips’ MILK OF MAGNESIA」も同じように作用します。ただし、こちらは有効成分が酸化マグネシウム(Magnesium hydroxide)というミネラルの一種であり、腎臓が弱い人が服用すると体内に蓄積する恐れがあるので要注意です。「COLACE」も広く販売されていますが、有効成分のドクサートナトリウム(Docusate sodium)は日本では販売されていません。3つとも便そのものに働きかける「非刺激性便秘薬」です。
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②ガンコな便秘には刺激性

よりガンコな便秘には、大腸に直接刺激を与え、ぜんどう運動を活発化させることで排便を促す「刺激性便秘薬」を使ってみるといいでしょう。代表的な有効成分はビサコジル(Bisacodyl)とセンノシド(Sennosides)。前者は「Dulcolax」、後者は「Senokot」や「ex・lax」などがほとんどの薬局で買えます。便秘薬は就寝前に服用するのが効果的とされ、「Overnight Relief」の表記が就寝前用の目印です。センノシドは、日本ではダイエット食品に含まれ問題になったこともあります。ちなみに、非刺激性で紹介した「COLACE」は、ドクサートナトリウムとセンノシド両方を含有し、便と腸の両方から攻めるタイプもあります。より即効性を求める人のためには、数分で効くとされるビサコジルなどの座薬もあります。
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※基礎疾患がある人は、市販薬であっても服用時に主治医または薬局の薬剤師に相談を。

 

知っておきたいファーマシー用語
OTC(Over The Counter)Drug
=一般用医薬品(俗にいう市販薬)。処方せんがなくても薬局で買える薬。
Active Ingredient=有効成分(薬効を示す物質)。薬の箱の裏に明記されている。

 

樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D. 
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。