毎週第4金曜号掲載「My 養生・不養生」第8回 金原聡子先生 円形脱毛症、顔面神経痛、じんましん、 食生活とストレスが原因ですね。

第8回 My 養生・不養生 
「健康的な生活をしましょうね」と日頃から患者に説いている医療専門家。プライベートでも健康に気を遣っているかというと、どっこいそうでもなかったりして!? 先生がたの意外な素顔を直撃インタビュー。

金原聡子先生
円形脱毛症、顔面神経痛、じんましん、
食生活とストレスが原因ですね。

CHNの同僚と

CHNの同僚と

金原聡子 
Satoko Kanahara, M.D.
内科、小児科専門医師。ニューヨーク州ヨンカース市生まれ、日本で幼児期を過ごした後、トルコ、アラブ首長国連邦、インドで小、中、高校を卒業。Oberlin College で生物学を学び、Cleveland Clinic付属Case Western Reserve大学医学部を卒業。Baylor College of Medicineで内科および小児科専門医の資格を取得。現在、ブロンクス区にあるCommunity Healthcare Network (NPO)のメィカルディレクター、またプライマリーケア医 として地域医療に従事。米国日本人医師会(JMSA)委員。

今月はブロンクス区南西部にある病院で内科、小児科、HIV/エイズ専門医として勤務する金原聡子先生を訪ねました。

—地下鉄インターベール駅から歩いて来ましたがまだちょっと荒れた感じですね。

 住民の健康度はニューヨーク市の中でこの辺りが一番低いです。HIVの罹患率も一番高いですし。注射針のシェアによるC型肝炎も多いですね。貧困や人種差別などから長い間、十分な医療が行き届いていなかった、ある意味、市内で最も取り残された地域の1つだと思います。2番線と5番線が停車してグランドセントラル駅やタイムズスクエアまで20分とアクセスもいいのに、まだ「危ない」というイメージがあるので、立ち遅れているのでしょう。

—受付で拝見したところ、ラテン系の患者さんが大部分ですね。

 患者さんはほぼ黒人とラテン系。ドミニカ共和国からの移民が多いです。ここ(CHN=コミュニティ・ヘルスケア・ネットワーク)
は、連邦や州の補助で運営される非営利団体で、主に低所得層を対象にした「医療のセーフティーネット」の役割を果たしています。患者さんの大部分はメディケイドに加入している人です。ビザを持っていないために保険に加入できない人にも「sliding scale」といって、収入に合わせた低価格で医療を提供しています。

—では早速、本題です。体に悪いと感じていることはなんですか?

 ちゃんとご飯を食べていないことです。勤務時間は午前9時から午後6時までですが、その後にミーティングがあって帰宅するのはだいたい9時ごろ。自炊する元気もなくて。ほとんどテイクアウトです。日本から遊びに来た姉が冷蔵庫を開けて、「なにこれ!何も入ってないじゃない。こんな食生活して、あんた死にたいの?」って叱られるぐらい。最近は、シームレス(レストラン注文アプリ)で頼んで自宅にデリバリーしてもらっています。

数えられるほどの食べ物しか入っていない冷蔵庫

数えられるほどの食べ物しか入っていない冷蔵庫

—朝ご飯やお昼ご飯は?

 朝は食べないです。10時ごろやっとコーヒーとお菓子やパン。同僚はお弁当を作って持って来るけれど、私は作れないのでデリバリー。座ってゆっくり食べる時間がないので立って食べています。たまに座って食べていると、スタッフから「先生、今日は座るの?」って言われちゃう(苦笑)。それも食べたり食べなかったりなので忙しくなると体重が落ちるんです。研修医のころはもっと忙しくて4日に1回は夜勤の生活が3から4カ月続いたためげっそり痩せてしまって…。心配した母が日本からご飯を作りに来てくれました。

—倒れないか心配です。

 はい。よく病気になるので、家族みんなが心配しています。ついこないだも円形脱毛症になっちゃった(笑)。

—笑いごとじゃないですよ!

 ですよね。きっと食生活とストレスが原因ですね。どんどん大きくなるのでどうしようかと思って。外食やデリバリーばかりでは野菜不足になるので肉を食べるのをやめてビーガンになろうかと真剣に考えたくらい。
 円形脱毛症は、医学生のときに1回経験しているんです。一昨年は顔面神経痛になって顔の半分が動かなくなっちゃった。去年はじんましん。全身にバーっと出て、少し引いて、また出てというのが3週間ほど続きました。痒くて眠れなかった。風邪もよく引きますけど、休めないので…。患者さんから「先生、大丈夫ですか?」って言われます。確かに不健康です。やばいですね。

—どうやって治したのですか?

 円形脱毛症は、皮膚科に行ってステロイド系の注射をしてもらっていたんですが、1カ月ほどして少し良くなってきたと思ったら、また別の場所が出てきてしまって「こりゃやばい、このまま脱け続けて禿げたらどうしよう」と、はり治療に行きました。最初にできた部分は注射を打ちすぎて、へこんでしまって、「これ以上、注射できません」と言われたときはさすがに焦りました。結局は治ったのですが、ステロイドが効いたのかはりが効いたのか分からないですね。
 顔面神経痛で引きつった顔の写真を母に送ったら、ショックを受けて日本からすっ飛んできた。母から「すぐ、はりに行きなさい」と言われて。そのときもはりとステロイド両方やりました。仕事は休めないし。何が大変て、まぶたが閉じられないので目がすごく乾くんです。あまりに痛いんで目を半分押さえながら仕事をしていました。食べ物も口から出て来ちゃうし歯茎と口の間に溜まっちゃうし。治るまでに1カ月半かかりました。じんましんもステロイドを勧められましたね。

—お医者さんなのに。

 医者は病気を治してはくれますが、健康を保つ術は教えてくれないですよね。栄養失調が原因でなる病気については勉強しても、栄養失調にならないためにどうしたらよいかといった勉強はあまりしない。入院している人を治して退院させることはできるけど、再び戻って来ないように指導することはないんです。そこが問題ですね。

—ちゃんと休んでいますか?

 お休みがちょっとでも取れると、遊びのスケジュールをパンパンに入れちゃう。時間がぽっかり空くと、寂しくなって落ち込んじゃうんです。体が壊れるほどスケジュール詰め込むなんて、ある意味「病気」ですね。

—体にいいこと、何かしていますか?

 週に1回ヨガに行くぐらいかな。メンタルな部分で人とぶつからないようにするにはどうしたらいいかを、体を動かしながら考えます。それと、ちゃんと睡眠を取るようにしています。カルテや検査結果のチェック、米国日本人医師会の関連業務は夜中の12時には終わらせて1日最低7時間は寝るようにしています。体にいいかどうかはさておき、英語が通じない患者さんのためにスペイン語の勉強も始めました。

週末に有休休暇を1日足してバミューダに(2018年2月)

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