【1日付ニューヨークタイムズ】他州や外国からニューヨーク市を訪れた人たちが疑問に感じるのは、黒の服を着たニューヨーカーが多いことだ。
ファッション工科大学美術館のディレクターで「ブラックドレス」の著者、バレリー・スティールさんは、「黒を着ているのは、ファッション関係者、芸術家、流行に敏感な人たち。その都市のスタイルを代弁するには目を引く少数民族でなければならない」と分析する。パリやミラノコレクションに出席するニューヨーカーは黒を着ることが多く、「ニューヨーカーといえば黒」とのイメージを定着させる一助にもなった。
この町で黒が流行りだしたのは1970年代後半から80年代初頭。「とんがっていて邪悪な雰囲気が芸術家や若者に受けた。見栄えがして他の色と組み合わせやすい点に着目したのが、デザイナーのダナ・キャラン」とスティールさん。しかし立役者は川久保玲や山本耀司で、ニューヨーカーは日本人デザイナーの「前衛的な黒」に魅了されたのだという。
「人々は、自分が好むイメージを自分に投影しようとするが、色はそれを達成するのに役立つ。黒が持つイメージは、パワー、洗練、官能。誰だってカッコよくて『デンジャラス』に見せたいもの。石造りの建築が多いこの町に一番映えるのも黒」と話した。