エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren、66歳):民主党、マサチューセッツ州上院議員
マサチューセッツ州初の女性上院議員で、ハーバードロースクールで教鞭をとっていた法律学者。民主党のなかでは「progressive」(プログレッシブ:革新派)と呼ばれる左派で、トランプの就任式翌日の抗議集会「ウィメンズマーチ」(女性の行進)でも演説した。積極的な消費者保護論者であり、オバマ政権では財務長官顧問を務めた。2016年の大統領選でもメディアから有力候補の1人とされたが、中立的な態度に終始した。
しかし、熱烈な支持者たちにより「エリザベス・ウォーレンを大統領に」ウェブサイトが設立された。
→www.elizabethwarrenfor
president.com
トランプ政権になってからは、2020年大統領選出馬の意思を固めたといい、Politicoなどの政治メディアは、すでに彼女が水面下で出馬運動を始めていると伝えている。女性を中心とした都会のリベラル層に人気が高いが、中西部や南部の保守派女性には人気がない。政治的見識、実績とも申し分ないとされるが、現在66歳と、年を取りすぎたことが心配な点だ。
トランプは、彼女を政敵としていちばん嫌っていて、昨年、「ポカホンタス」と呼んで揶揄したことがある。ウォーレン自身は、自分は先住民(ネイティブアメリカン)の血を引いていると述べてきたが、調査による確証は得られていない。
学生結婚した夫とは離婚し、法学博士と再婚。最初の夫の間に子ども2人と孫がいる。
キルステン・ギリブランド(Kirsten Elizabeth Rutnik Gillibrand、51歳):民主党、ニューヨーク州上院議員
ウォーレン議員が年を取りすぎているなら、ギリブランド議員はまだ50代になったばかり。可能性は十分にある。
彼女は、昨年12月、トランプにセクハラおよび性的暴行容疑が報道されたとき、CNNで「大統領は辞任すべき」と発言し注目を浴びた。それを知ったトランプは、「キルステン・ギリブランドが私のオフィスに選挙資金の寄付を乞いに来たのはそれほど昔のことではない。彼女は寄付金を集めるためにはなんでもした」と、意味深なツイートをした。
これに激怒したギリブランドは12月13日、「トゥデイ」(NBC放送)に出演すると、トランプを「sexist」(セクシスト:性差別主義者)と非難した。
民主党の一部からは「彼女は保守的すぎる」とも言われているが、ギリブランドは女性の政界進出を支援し、同性愛者の権利保護の支持者である。同性愛者の兵士に対して定めた法律である「DADT」(Don’t Ask, Don’t Tell)法案の撤廃にも尽力してきた。2009年、ヒラリー・クリントンの後任として、上院議席を譲り受けるかたちで当選後、精力的な活動を続けている。
NYT(ニューヨークタイムズ紙)とNPR(全米公共ラジオ)は、彼女を2020年の大統領選挙の有力候補の1人に挙げている。2017年5月のCBSニュースのインタビューでは「2018年の中間選挙再選に焦点を当てているため、2020年出馬は考えていない」と述べているが、その後に状況が変化したため、いまでは出馬を考えていると伝えられている。
キルステンという名前通りデンマーク系で、夫は英国系のベンチャーキャピタリスト。2人の子どもの母だ。
カーマラ・ハリス(Kamala Devi Harris 、53歳):民主党、カリフォルニア州上院議員
ハリス議員はオバマ前大統領とよく比較される。「女オバマ」と言われることもある。それは、オバマと同じようにアフリカ系のうえ、上院議員当選1期目でホワイトハウスを目指す可能性が十分だからだ。
彼女はそれにふさわしい資質とキャリアがあると、多くのメディアが評価している。
父親はジャマイカ移民(アフリカ系)で、スタンフォード大学の教授、母親はインド系である。カリフォルニア州の司法界でキャリアを積んだ後、2016年の上院選挙で当選し、ジャマイカ系およびインド系それぞれにおいて初の上院議員となった。
法務博士号を持つ彼女は、2003年にサンフランシスコの地方検事となり、2011年まで務めた。その後、カリフォルニア州の州司法長官となって、さまざまな活動を行ってきた。
州内全域で不登校を減らすキャンペーン、レイプ事件の解決、刑事司法システム改革「Smart On Crime」(スマート・オン・クライム)の実施など。ちなみに、スマート・オン・クライムとは、軽犯罪者は刑務所に収監しないで更生を図るプログラム。
また、彼女はカリフォルニア州の同性婚禁止条項である「Proposition 8」(プロポジション8)」に反対してきた。
上院議員に当選時、ハリスはトランプの人種差別主義や外国人排斥の動きに全力で立ち向かうと、有権者に誓った。つまり反トランプであり、そのなかでももっともリベラルな女性政治家と言えるだろう。
一時、後にサンフランシスコ市長になるウィリー・ブラウンと交際していたが、2014年にその後交際していた弁護士のダグラス・エモフと結婚している。
タミー・ボールドウィン(Tammy Suzanne Green Baldwin、55歳):ウィスコンシン州上議員
ボールドウィンは、異色の議員である。それは、女性議員であるうえに、初めて自らが同性愛者であると告白した連邦議員だからだ。
スミスカレッジを経てウィスコンシン州立大マジソン校で法学の学位を取得して、マジソン市議会議員となり、1992年にウィスコンシン州議会議員に選出され3期を務めた。その後、1998年、ウィスコンシン州で初めての女性下院議員となり7期務め、上院に転じている。つまり、政治的キャリアは申し分なく、女性大統領となる資格、能力は十分にある。
彼女は経済・金融政策に強く、たとえば連邦議会委員のときは「Glass-Steagall Act」(グラススティーガル法:1933年に制定された銀行・証券分離法)の緩和に反対している。また課税の平等を確実にする「Buffett Rule」(バフェットルール)には賛同している。
ボールドウィンの活動は、政党の垣根を越えたもので、強い経済つくる、それで雇用を確保し、適切な高等教育、質の高いヘルスケア、高齢者福祉を実施していこうというものだ。
ボールドウィンは2008年の大統領選では、当初、ヒラリーを支持していたが、総選挙の際にはチームオバマに加わった。
上院議員に当選したとき、彼女はこう語っている。「男社会とどうやりあうかを考えたとき、私が彼らと同じ部屋にいなければ、彼らが物事を決めてしまうでしょう。しかし、私がその部屋にいれば、自分の意見を言えるということです」
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com