まだいる民主党の女性大統領候補
前回の4人が有力候補とされているが、民主党にはまだ有望な候補者がいる。ここからは、それをまとめて紹介してみたい。
■メリー・ランドリュー(Mary Loretta Landrieu、62歳):民主党、前ルイジアナ州上院議員
ランドリュー議員は、1996年に初当選して以来、民主党内では指折りの保守派として知られてきた。ただし、「Pro-Choice」(プロチョイス:中絶賛成派)の「NARAL」(NARAL Pro-Choice America)のメンバーである。
相続税の廃止を提唱し、2006年には「Common Ground Coalition」(コモン・グラウンド・コアリション)という超党派の議員連盟を結成。民主、共和の協力体制を強化する運動をしている。また、「DADT法案」の撤廃を推進してきた。弁護士の夫と2人の子どもがいる。
■マリア・キャントウェル(Maria Elaine Cantwell 60歳):民主党、ワシントン州上院議員
1993年に下院議員になり、2000年から上院議員を務めている。エネルギー委員会の委員、スモールビジネス&アントレプレナー委員会の委員長を務めた。リベラルらしく、緊急避妊薬「プランB」の認可を推進し、16歳以下の少女にもその使用を認める意見を表明している。
■デビー・スタベノウ(Deborah Ann Greer Stabenow、67歳):民主党、ミシガン州上院議員
スタベノウ議員は、ミシガン州で初めての女性上院議員。自身を「穏健派の民主党員」と称し、主に上院農業委員会で活躍してきた。2008年のリーマンショック時の金融業界の「Bail out」(ベイルアウト:救済措置)に際しては、「額が大きすぎる」と反対したが、オバマ前大統領の緊急救済対策は支持した。プロチョイスだが、母親の命が危険にさらされている場合を除き、「partial-birth abortion」(部分出産中絶)には反対している。
■クレア・マカースキル(Claire Conner McCaskill、64歳):民主党、ミズーリ州上院議員
マカースキル議員は、2006年に共和党のトッド・エイキン候補を破って当選したが、これはエイキン候補が「まともなレイプであれば、女性の体は拒絶反応を起こして妊娠しない」と発言したことが大きく影響した。上院では軍事員会、安全保障委員会で活躍している。
弁護士出身で、ミズーリ州の政界におけるキャリアは長く、民主党のなかでも穏健派である。3人の子どもの母。
「ジェネレーションZ」の動向が選挙を左右
以上で一通り紹介は終わるが、じつは、アメリカは女性の権利先進国にも関わらず女性議員の割合は少ない。上下院合わせて、19.7%にすぎない。上院では全100人中、女性議員は20人となっている。もちろん、日本は世界の国のなかでも最低ランクに近く、女性の国会議員の割合は13.7%である(註:アメリカでは大統領選挙には議員でなくても立候補できる)。
2020年の大統領選挙の勝敗を左右するのは、当然だが政党支持票である。しかし、それ以上に女性票が大事だとみられている。
ところが、先の大統領選挙では、2大政党で初の女性候補となったヒラリーへの女性の支持率は54%にすぎなかった。ヒラリーはなぜか女性に嫌われたのだ。
とすれば、女性に好かれる候補なら、党派を超え、人種を超えて、圧倒的な票を集める可能性がある。
また、今度の選挙で大事なのは、次の世代とされる「ジェネレーション Z」(Z世代)の動向だ。1990年代後半から2000年生まれが「Z世代」と呼ばれているが、この世代はどの世代とも違う特徴を持っている。
彼らはまず完全な「デジタルネイティブ」であり、生まれたときからスマホを持ち、オンタイムで仲間とコミュニケーションを取っている。そして、組織に縛られず起業家精神が旺盛で、男女平等意識がどの世代よりも強い。
となると、女性大統領が誕生することはますます現実味を帯びてこないだろうか?
(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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