【15日付ニューヨークタイムズ】ニューヨーク市在住のジャーナリストで作家のトム・ウルフさんが14日、マンハッタン区の病院で感染症のため亡くなった。88歳だった。1960年代に小説的技法を駆使したノンフィクション作品で高い評価を獲得、「ニュージャーナリズムの旗手」と呼ばれた。
ビートニク作家ケン・ケーシーとその共同生活者、メリー・プランクスターズと共にカリフォルニア州を旅してまとめた「ザ・エレクトリック・クールエイド・アシッド・テスト」(68年)は反体制文学の金字塔として知られ、米国初の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」の宇宙飛行士を描いた「ザ・ライト・スタッフ」(79年)では米国で最も権威ある文学賞、ナショナルブックアワードを受賞した。同作品は83年、サム・シェパード主演で映画化された。80年代の金融街を舞台に、権力と金に群がる人間像を活写した小説「ザ・ボンファイア・オブ・ザ・バニティーズ」(87年)はベストセラーを記録、80年代の米国文学を代表する作品となった。トム・ハンクス主演の同名映画(90年)の原作としても知られている。
バージニア州生まれ。常に仕立てのスリーピースを着こなす「伊達男」だった。