第10回「水虫と爪白癬の薬」 OTC101ファーマシー探訪 with ひぐち先生

higuchisensei日本の薬剤師・薬学博士で、現在はコロンビア大学博士研究員の樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身、在米3年が経っても米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」

第10回「水虫と爪白癬の薬」
水虫も爪白癬も同じ成分で退治!

夏の匂いと共にアウトドアシーズンの到来。レジャーにスポーツに、体を動かす機会が増え汗をかきやすい夏は、困ったことに菌も活発になります。そこで気をつけたいのが、蒸れる足元が大好きな水虫(英語でathlete’s foot)。水虫は男性がなるものと思ったら大間違い。実は女性も多いんです。

「水虫」

原因菌を殺す抗真菌薬
水虫は、足や手などに付着したカビの一種である白癬(はくせん)菌が角質の奥にすみついてしまうことで起こります。白癬菌は抗真菌薬で治療する必要があります。テルビナフィン(Terbinafine)、クロトリマゾール(Clotrimazole)、トルナフテート(Tolnaftate)、ミコナゾール硝酸塩(Miconazole nitrate)などが代表的な有効成分で、いずれも菌自体の膜を壊して殺菌します。テルビナフィンを含む「Lamisil」は「ラミシール」として日本でも販売されているので、テレビCMなどで見覚えがある人も多いでしょう。カンジダの治療にも使われるクロトリマゾールおよびミコナゾール硝酸塩を含むのは「LOTRIMIN」シリーズ、トルナフテートを含むのは「Tinactin」などです。これらの効能の違いはというと、実は大差はないといわれていて、処方薬の場合に保険の関係で異なる、また個人の体質によって効果に差が出る程度と考えていいでしょう。また、最も抗真菌作用が強い成分に、ブテナフィン塩酸塩(Butenafine hydrochloride)があります。「LOTRIMIN」シリーズにはこのブテナフィン塩酸塩を含む商品もあるので、症状が比較的強い人は使用してみるのも手です。ジュクジュクしている水虫にはクリームやパウダースプレー、カサカサしている水虫にはジェルや液体と使い分けてください。

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原因菌が育ちにくい環境を作る
抗真菌薬の成分とは違い、一部の商品に含まれるウンデシレン酸(Undecylenic acid)は患部を酸性にし、白癬菌が育ちにくい環境をつくることで症状を和らげるとされています。ただし、医学的な根拠はなく、その効果は保証しにくいですね。

「爪白癬」

同じ成分でも薬剤に工夫
水虫に対し、爪白癬は白癬菌が爪の間に入り込んで、爪そのものが感染してしまった状態のこと。爪白癬用のOTC薬は液体の筆タイプが多いように感じます。有効成分は水虫の薬と同じですが、爪に浸透しやすくするため薬剤に製剤的工夫(賦形剤など)がされています。なので、水虫用と爪白癬用は同じ薬剤でも性質は異なるといえます。「FUNGI CURE」と「FUNGI NAIL」にはウンデシレン酸が入っています。トルナフテートの入った「PRO×CLEARZ」が効いたという友人の話も聞きました。

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注意点
水虫や爪白癬は菌が角質や爪に深く浸透するため、治ったように見えてもまだ奥に菌が残っている場合があります。そのため、表面はきれいになっても、しばらくは使い続けてください。開封した商品は使い切ってしまうくらいでいいでしょう。また、4週間使っても改善が見られない場合は使用をやめて、専門医に相談してください。

 

樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D. 
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。