前回に続いて、2020年の大統領選挙で出馬リストに挙がっている女性候補者たちを紹介する。今回は保守系候補者たちだ。トランプ大統領が2期目をやることはないといわれているが、それで民主党の大統領が誕生するとは限らない。
女性候補といえば、フェミニズムの伝統からいって民主党系、リベラル系とされるが、保守系の女性候補も数多くいて、彼女たちを支持する人も多いのだ。
リベラル、保守を問わず男性より女性を
前回の記事で述べたように、2020年の大統領選挙では、女性大統領の誕生が待望されている。なんといっても、前回選挙でヒラリー・クリントン候補が敗れたことが大きく、今度こそ「ガラスの天井」(glass ceiling)を打ち破りたいという女性たちの声が強まっている。
これは、トランプ大統領が、とんでもない“セクハラ老人”であったことも大きく影響している。そうしたなか、昨年の秋には「#MeToo」ムーブメントが起こり、今年になってからは、オプラ・ウィンフリー(Oprah Gail Winfrey、63歳)の待望論「オプラ2020」が沸き起こった。
こうなってくると、これはリベラル(民主党系)、保守(共和党系)を問わない、「男性より女性を選ぼう」という運動と言っていいだろう。
とくに、2020年の大統領選で新有権者となってくる「generation Z」(Z世代)には、この傾向が強い。世界を見渡しても、女性のリーダーは珍しくないのに、なぜ、アメリカだけが45代にわたって男性大統領を続けているのか、そこに合理的な理由がない。
それでは、以下、保守系の女性大統領候補を紹介していきたい。
ニッキー・ヘイリー(Nimrata Nikki Randhawa Haley、46歳)国連大使
ニッキー・ヘイリーは、サウスカロライナ州史上初の女性知事であり、任期中は全米50州で最年少の知事だった。その知名度と実績で、トランプが国連大使に任命し、現在、その職責を忠実に果たしている。
しかし、彼女は、大統領選挙中にはトランプの移民政策には反対の立場を取り、「トランプ氏は大統領にふさわしくない」と批判していた。
ヘイリーが注目されたのは、2016年のオバマ前大統領の一般教書演説に対する共和党の反対演説。ここで、彼女の弁舌の巧みさが知れ渡り、一躍、共和党の女性議員のトップと目されるようになった。大統領選では、共和党候補指名争いで敗れたテッド・クルーズ上院議員、マルコ・ルビオ上院議員を支持していたが、トランプに国連大使を要請されると、素直に受け入れた。
国連でのヘイリーは、アメリカの国益を第一にした強硬路線を取ってきた。北朝鮮問題では、外交的解決を可能にするには、最強の制裁措置が必要だと主張し、「アメリカはけっして戦争を望んだりしないし、いまも望んでいないが、われわれの忍耐力は無限ではない」と、北朝鮮に警告した。
また、安保理の演説では、イランを標的にし、「中東の平和と安全に対する脅威の背後には常にイランがいる」と、イランを非難した。
ヘイリーが知事時代に注目されたのは、南軍旗の撤去問題だった。これは、サウスカロライナ州の議会議事堂に掲げられていた南軍旗を、2015年6月に教会で白人男性が9人の黒人を射殺する事件が起きたことをきっかけに、ヘイリーが撤去を命じたという事件だ。このことが報道されると、全米で大論争が巻き起こった。結局、州議会が承認して旗は撤去されたが、ヘイリーの知名度は一気に上がった。
ヘイリーの父母は、インドからの移民で、彼女は移住後に生まれた。クレムゾン大学で会計学を専攻、卒業後はキャリアを積み重ね、2004年に州の下院議員選挙に出て当選し、その後に州知事となった。
大学時代に知り合ったマイケル・ヘイリー氏と1996年に結婚。夫は州兵として勤務。10代の子ども2人の母親だ。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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