連載95 山田順の「週刊:未来地図」アメリカ初の女性大統領誕生(2の中)トランプ以後を狙う保守系候補者たち

ケリー・エイヨット (Kelly Ann Ayotte、50歳): ニューハンプシャー州上院議員

 現在、最年少の女性上院議員として知られるエイヨット議員は、安全保障の第一人者と目されている。日本にとっては恩人ともいえ、尖閣問題に関して、日本の施政権を守る書簡に署名した8人の議員のうちの1人である。
 ペンシルベニア州立大学でBA、ヴィラノヴァ大学でJDを修得し、ニューハンプシャーの法曹界でキャリアを積んで、2004年に州の司法長官に就任した。その後、2010年に上院議員選挙に立候補して当選した。
 メディアは彼女を「a conservative Republican」(保守的共和党員)と呼んでいる。妊娠中絶には断固として反対の立場(Pro-Life: プロライフ)を貫いてきており、これまでに2度、中絶支援を行う「PPFA」( Planned Parenthood Federation of America: 米国家族計画連盟)を起訴し、同性婚にも反対している。
 ただし、トランプ大統領の誕生には苦悩し、支持するかしないかで揺れ動いた。しかし、最終的には、民主党の全国党大会で、勲功で表彰されながらも2004年にイラクで戦死したイスラム系アメリカ兵の両親が登壇し、トランプを強く非難したことをきっかけに、共和党員なのにトランプ不支持に転じた。
 というのは、トランプはこの両親をツイッターで徹底的に攻撃したからだ。エイヨットはこれが許せず、戦死した兵士の両親を侮辱するなどとんでもないと発言した。
 エイヨットの夫は軍人であり、2人の子どもがいる。しかし、トランプはエイヨットの批判に「おまえは弱い」と、ツイッターで返したのだった。

スーザン・コリンズ(Susan Margaret Collins、65歳):メイン州上院議員

 スーザン・コリンズ議員は、2006年に上院議員に初当選。以後、国土安全保障・政府問題委員会の幹部を務めている。東部出身者には珍しいカトリック教徒で、政治的なポジションは、「Rockefeller Republican」(ロックフェラー・リパブリカン:共和党穏健派)と評されている。共和党にあっても、かなりリベラルな姿勢を見せているからだ。
 彼女は、オバマ大統領の医療保険改革には反対票を投じた。しかし、「DADT法案」(同性愛者の軍勤務を禁ずる法律)の撤廃には支持を表明した。こうした彼女のリベラルな姿勢に、「NARAL」(National Abortion Rights Action League:妊娠中絶権擁護連盟)は、彼女を「Pro-Choice」(プロチョイス:中絶賛成派)の議員と位置付けている。
 オバマ前大統領が推進した「Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act」(ドッド・フランク・金融規制改革と消費者保護法案)には、共和党からスコット・ブラウン議員などと共に賛成に回った。
 コリンズは、セントローレンス大学を卒業後、ウィリアム・コーエン下院議員のスタッフとなり、その後、政治的なキャリアを積んで、1996年、コーエンが引退・不出馬を決めたことから、後継として連邦上院議員選挙に出馬して当選した。上院議員としては、共和党と民主党をつなぐ役目を果たしており、政策は民主党寄りである。
 たとえば、LGBTコミュニティと関わりがあり、そのため、共和党の政治家でありながらLGBTの人権団体「Human Rights Campaign」(ヒューマン・ライツ・キャンペーン)から支持を受けている。
同性愛・同性婚に否定的な立場を取る政治家・党員が多い共和党のなかにあって、彼女の存在は異色といえる。
(つづく)

 
 
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【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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