男性と女性の賃金、生涯年収はこんなに違う
就業率が上がって働く女性が増えても賃金が安ければ、生活は改善されないどころか悪化する。実際のところ、日本の女性の賃金は、先進諸国から見ると圧倒的に安い。しかも男性に比べたら半分程度で、ほとんど差別と言っていい。
国税庁の「民間給与実態調査統計」(平成28年)によると、民間給与所得者の平均年収は約422万円。これを、男女別に見ると、男性の約521万円に対し、女性はなんと約280万円である。生涯年収ではどうだろうか?
生涯年収となると、男女の差はさらに開く。厚生労働省の「賃金構造基本統計」(平成27年)によると、男性では年齢階級が高くなるとともに賃金も上昇し、50~54歳でピークを迎える。20~24歳の賃金を100とするとピーク時には215の賃金をもらっていることになる。一方の女性も50~54歳でピークを迎えるが、ピーク時でも133と賃金カーブは男性の半分ほど。賃金の伸び率にも、明確に差別があることがわかる。
それでも、男女の所定内給与額の格差は、長期的に見ると縮小しているとされる。先の国税庁の統計によれば、平成28年の男性一般労働者の給与水準を100とした場合の女性一般労働者の給与水準は73.0で、前年に比べ0.8ポイント縮小している。しかし、たったの0.8ポイントであり、これでは格差はほとんど固定化されていると言っていい。
もともと、女性の賃金ベースは男性より低く設定されている。労働基準法、男女雇用機会均等法で「男女差別」は禁止されているとはいえ、女性の労働をスキルが低いとみなすことによって、差別は公然と行われているのだ。それを如実に表すのが、重要なポストや管理職に女性を登用しない企業が圧倒的に多いことだ。女性は、一部の人間を除いて昇進しないのだから、平均年収も生涯年収も伸びるわけがない。
いまだ「ガラスの天井」が厳然として存在する
国際会計事務所のグラントソントンによる「女性管理職比率ランキング」(2016年)によると、日本は女性管理職の割合でダントツの最下位である。
以下、ランキングを示すと、トップ5は、1位ロシア47%、2位インドネシア46%、3位エストニア40%、ポーランド40%、フィリピン40%となっている。これに対してワースト5は、1位日本7%、2位アルゼンチン15%、3位インド17%、4位ドイツ18%、5位ブラジル19%となっている。
世界各国、文化の違いはあるとはいえ、たったの7%では低すぎる。日本企業にイノベーションが起こらず、衰退が続くのは、こうしたことが大きな原因になっているに間違いない。
日本は、女性国会議員数においても世界で最下位近辺をウロウロしている。列国議会同盟(IPU)の「国会における女性議員の割合」(2017年)における下院の比較によると、トップはルワンダの61.3%で、世界平均(193カ国)は23.4%となっている。アフリカの小国ルワンダが6割に達しているのはクオータ制によるものだが、日本の割合が9.3%、世界164位というのは、あまりにもひどすぎないだろうか。自民党は現在、参議院の定数を増やすことを国会に提案している。しかし、そんなことより、「女性議員増員法」を成立させるほうが優先ではなかろうか。
ちなみに、スウエーデン、フィンランドなどの北欧諸国は40%を超え、フランスやオランダでは約35%、イギリスやカナダなどで約30%、中国ですら約25%はある。女性議員数が少ないと批判されるアメリカも約20%となっている。日本は、アメリカの半分にも満たない。
こうして見ると、日本には世界各国で終わろうとしている「ガラスの天井」(glass ceiling)が、いまも厳然と存在している。『エコノミスト』誌の「ガラスの天井ランキング」(2017年、世界29カ国)によると、日本はなんと28位である。ちなみに、トップ10は、1位アイスランド、2位スウェーデン、3位ノルウェー、4位フィンランド、5位ポーランド、6位フランス、7位デンマーク、8位ベルギー、9位ハンガリー、10位カナダとなっている。なお、最下位の29位は韓国だ。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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