ファッションライターあやこんぶの“おしゃクロ!” Vol.45 進化したレトロがここに New York Fashion Week Mens 2019SS

 メンズの春夏コレクションは、6月のロンドン、ミラノ、パリに始まり、ニューヨークにバトンタッチします。今期は3日間というタイトなスケジュールで敢行。

その幕開けとなる9日のNYMD(ニューヨーク・メンズ・デー)では、金融街にある会場、クリエイティブドライブ前には猛暑のなか、用意周到にカメラを構えた人々がいつものように陣取り、凝縮した熱気がそこにはありました。

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 NYMD初日の午前の部を飾るのは、気鋭の7ブランド。なかでも私が注目したのは、デビッド・ハート=写真左=とクラマー&スタウト=写真右=の2つ。デビッド・ハートは、ハリウッド俳優たちがレッドカーペットで身にまとうタキシードも手掛けるように、スーツづくりには定評があります。今期は70年代調のにぎやかでレトロな展開。ニクソン大統領=当時=を辞任に追い込んだ政治スキャンダル「ウォーターゲート事件」(1972年)をテーマにしたというように、中央には当時を思わせる録音機が置かれたデスクが鎮座し、モデルはあの時の新聞を読んでいたり。大胆な大柄プリントを施したシルキーな生地を使ったファンキーなスーツはインパクト大で、胸筋を美しく際立たせるようなニットポロもカラフルな色使い、そしてベルボトムパンツは歩くたびに優雅に踊っているかのようです。その他のブランドがいわゆるストリート系であったのに比べ、明らかに一線を画している感じ。70年代当時の映画の登場人物のようなド派手な個性が前面に出た痛快さに魅了されてしまいました。

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 クラマー&スタウトのテーマは「8デイズ・イン・ジャパン」。藍染めの着物のようなジャケット、日本伝統の「青海波」模様のセットアップなど、日本人の私たちにはどこか懐かささえ感じるもの。バイオリンを奏でるモデル、ダンサーたちが突然踊り出し、単調なショーから一気に空気を変え、観客を驚かせ、夏祭りが始まったような場面展開。パンツはややくるぶしが見える絶妙の丈感、ほど良い太さで何ともお洒落。この昭和初期のノスタルジックさがニューヨークで和洋折衷にまとまり、粋でいなせな仕上がりとなっていました。

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フリー・ジャーナリスト
Aya Komboo
日本では数々の出版社で経験を積み、フリーランスへ転身。2006年よりロサンゼルスへ渡米し、現在はニューヨークを拠点にファッション/カルチャー誌などで活躍している。
www.ayakomboo.com