「スペクトラム」事業終了要請でどうなる？
ニューヨーク州と州内最大のネットプロバイダーの闘い
７月27日、ニューヨーク州はネットブランド「スペクトラム」で知られる通信大手、チャーターコミュニケーションズに州内での事業終了を要請した。ネットへのアクセスは止まるの？ 他社に乗り換えた方が良いの？ 今回はそんな疑問に答える。
タイムワーナー買収承認撤回
チャーターは電話やケーブルテレビ事業の他、インターネットプロバイダーとして事業を展開する。７月27日付ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ニューヨーク州公益事業委員会は同日、チャーターによるタイム・ワーナー・ケーブルの買収の承認を取り消したと発表。チャーターに州内での事業を終了するよう要請した。
同委員会は2016年の買収承認の条件として、州内の農村部などネットサービスのない、または不十分な地域に通信網を拡大し、2020年５月までに14万5000の世帯や企業にサービスを提供する基準が設けられた。しかし同社は拡大が履行できず、同委員会はこの日、同社が基準を満たすための期限を過ぎたとして、同社に対し罰金100万ドルを科し、州内の顧客が別のプロバイダーに移行するための計画作成に60日間の猶予を与えた。
一方、同社の広報担当者は合併後に州内で８万6000以上の住宅や企業にネットサービスを拡大し、基準を満たすために順調に進んでいると弁明。同月31日付ザ・バッファロー・ニュースによると、同社最高経営責任者（ＣＥＯ）のトーマス・ラトリッジ氏は同日、通信アナリストとの電話会談で、「われわれの方が正しい。必要な場合は提訴も辞さない」と述べた。また、州知事選挙を控えるという今年の州の事情が影響しているとみていることも明かした。
ことば インターネット・サービス・プロバイダー（ＩＳＰ）
インターネットの接続サービスを提供する事業者のこと。米国では2005年、アメリカ連邦通信委員会（ＦＣＣ）がブロードバンド政策綱領を発表し、公共のインターネットの相互接続を保持し促進するため、消費者には自由にサービスを利用し、プロバイダーを選択する権利などが与えられるとした。
ニューヨーク州内にはスペクトラム（チャーター）、ベライゾン、フロンティア、エックスフィニティ（コムキャスト）など、193のインターネットプロバイダーが存在。しかしインターネット回線が引かれていない地域に住む州民は18万6000人で、プロバイダーの選択肢が１社のみの地域に住む州民は110万人に上る。データは公的データを集めて公開するウェブサイト、ブロードバンドナウによる。
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ニューヨーク州のスペクトラムユーザーは？
同委員会によると、スペクトラムは州内1150の自治体で約200万人にサービスを提供、業界で州内１位のシェアを誇る。今回の決定で事業を終了した場合、ユーザーはテレビやネットへのアクセスがなくなるというのか？ ７月30日付ザ・バッファロー・ニュースがその疑問に答えた。
―スペクトラムユーザーにはこれから何が起こるの？
テレビ、ネット、電話全てにおいて、スペクトラムの回線が途切れるということはないし、チャーターがユーザーを見捨てることはまずない。
同社にとって最低の筋書きは、州内での事業を終了し、回線を他社に売却すること。この場合、同社が顧客を失えば、売却の際の価値が低くなるため顧客やサービスを保持するよう努力するだろう。
他方、同社にとっての最高の筋書きは、州内で継続して事業を展開すること。しかしユーザーを見捨てて州内で顧客やサービスを失えば、事業縮小を招くばかりか顧客の評判も下がり、将来の事業も失敗に終わるだろう。いずれの場合も、州内のユーザーを見捨てるとは考えられないのだ。
―ではユーザーはどうすれば良いの？
最良の選択肢は、おそらく「何もしない」ことだ。少なくとも、チャーターの将来が怪しいからといって他社に乗り換えるなどということはしなくて良い。
州が同社に与えた60日間の猶予期間中は様子を見るのが懸命だろう。同社が州内での事業を終えるとしても慎重に、段階的に事業を終了させていくため、当面の間は心配する必要はないのではないか。
参考サイト：[BroadbandNow] INTERNET ACCESS IN NEW YORK
参考記事：[The Wall Street Journal] New York Regulator Revokes Its Approval of Charter, Time Warner Cable Merger, [The Buffalo News] Charter CEO: ‘We’re in the right’ in dispute with New York State; You asked, we answered: What happens to New York State Spectrum customers?
気になる人事
マイケル・マンリー
フィアット・クライスラー・オートモービルズ
最高経営責任者（ＣＥＯ）
マンリー氏。ＦＣＡ提供
欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ（ＦＣＡ）は７月21日、最高経営責任者（ＣＥＯ）に傘下の中核ブランド「ジープ」部門トップのマイケル・マンリー氏（54）を指名、同日就任した。
14年以上にわたって同社を率い、業績回復を主導した前ＣＥＯのセルジオ・マルキオンネ氏（享年66）は肩の手術後、合併症に見舞われ容体が急変、同月25日に死亡した。マルキオンネ氏は2019年の退任を予定していたため、突然のＣＥＯ交代となった。
マンリー氏は1964年、英国エデンブリッジ生まれ。ロンドンのサウスバンク大学で工学の学士号を取得後、アシュリッジのビジネススクールでＭＢＡを取得。自動車金融会社、スワンナショナルで研修生としてキャリアをスタートさせ、仏自動車大手ルノー、プジョーの販売代理店を経てレキシントン・オート・セールスに入社。2000年にＦＣＡの前身、ダイムラークライスラーに買収された際、同社のネットワーク開発ディレクターに就任した。08年から同社の企画販売部門の副部門長とアジア太平洋地域の責任者を兼任し、09年に「ジープ」部門のトップに就任。14年のＦＣＡによるクライスラー買収を経て、15年にはピックアップトラックの「ラム」部門のトップに就いた。
マンリー氏が「ジープ」部門を率いてからジープの販売台数は09年の32万台から15年には120万台に急増。マンリー氏はイタリアの地元紙に対し、ジープのトップ就任を「キャリアの転換点だった」と話している。
気になるアプリ
SoundPrint
無料
www.soundprint.co
App Store
「静か」な飲食店が探せる。スマートフォンなどでレストランやバーなどの騒音レベルを測定し、デシベルで表示。70デシベル以下の場所を「静か」と定義し、利用者が測定した騒音データを集約、地図上で表示する。
