ニューヨークの美術大学で勉強するために21歳で来米。さまざまな仕事を経て約2年前からロング・アイランド・シティー(LIC)を拠点にアーティストとして活動する田中涼子さん。3年前の晩夏、ハンガリー原産の猟犬、ショート・ヘアード・ハンガリアン・ビズラ(以下ビズラ)という珍しい犬種を知ったことがジンジャーとの出会いでした。
—ビズラのどこが気に入ったのですか?
もともと犬が大好きで、犬と暮らす生活に憧れていました。6年前にマンハッタンからLICに引越しして、3年前に体調を崩し仕事から退き、念願だった犬を飼うことを決意しました。パートナーはトライアスロンにも参加するほどのスポーツマンで一緒に走れる犬が希望でした。相当量の運動が必要な中型犬で人懐っこいビズラのことを知り、毎日2人でビズラの動画を観て過ごしました。インターネットでブリーダーを調べたところ、運よくアップステートのブリーダーが育てているジンジャー(生後7週間・雌)の写真が目にとまり一目惚れ。すぐに電話をして2日後に会いに行く予約に取り付けました。猟犬ということもあって、狩猟が盛んな中西部にはビズラのブリーダーが多いのですが、ニューヨーク州には少ないんですよ。
—ブリーダーで「ご対面」して、即決で連れて帰ったそうですね。
ビズラがいいとは言っても、本当のところ私は、健康で性格が良さそうな犬ならどんな犬でもいいなと思っていたんです。でもパートナーはビズラか大型犬が希望でしたので、ジンジャーを見てメロメロに。なんの準備もしていなかったので、ブリーダーの帰りにペットショップで必要なもの全てをそろえました。
—ジンジャーとの毎日をインスタグラムにアップされているそうですね。
私のインスタ(Ginger’s Life in NYC@nyc.vizsla.ginger)を見てビズラに興味を持ってくれた、日本在住の人から質問もありました。日本にはビズラのブリーダーがすごく少ないのかもしれませんね。でも、たっぷり走らせられるような広い土地がないと飼うのが難しいこと、お留守番を長時間させられないことなどから、日本で飼うのは難しい犬種だと思います。
—ジンジャーとの暮らしは? 何か発見はありましたか?
運動をしっかりさせないといけない犬種ということもあり、1歳半になるまで、まるで人間の子育てのように奮闘する毎日でしたが、今年に入って、週に2回はアストリアの大きなドッグデイケアでお友達と思いっきり遊んで帰ってきてくれます。だから家では落ち着いています。ドッグデイケアではスタッフがドア・トゥ・ドアで送り迎えをしてくれます。幼稚園に行く感じですね(笑)。
ジンジャーと出会ってから私とパートナーの生活も変わりました。週末には北に2時間車を走らせハイキングをするようになるなど、マンハッタンのシティーライフから郊外のスローライフへと変化してきました。毎朝、ジンジャーとお気に入りのカフェまで散歩、といったシンプルなことに幸せを感じようになりました。これからも家族の一員として、健康で楽しい時間をなるべく長く過ごしてくれたら、と願っています。
*田中さんの作品はウェブサイト
www.ryokotanaka.comを参照。
【 教えて!シンゴ先生 】
アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。
Q、 自宅でできる健康チェック方法を教えてください。
A、 自宅でペットの健康チェックをする際に必要なのは人間の五感です。特別な器具は必要ありません。まずは目(視覚)で観察します。食欲はあるか。食べ方や歩き方は普段と変わらないか。便や尿の色や形状は。排尿や排便時に何か変わったことはないか。次は耳(聴覚)で観察します。吠え方、鳴き方、呼吸音などペットから発される音を聞きましょう。鳴き声を上げるのは体のどこかに痛みがあるからかもしれません。鼻(嗅覚)も大切です。口臭は歯や歯肉の異常のサインかもしれませんし、耳や皮膚の臭いもトラブルの可能性があります。便や尿の臭いの変化もまた、病気の可能性があります。細菌感染による化膿は独特の臭いを発しますし、痛みも伴いますので、比較的簡単に発見できます。手(触覚)も忘れてはいけません。毎日触ることにより皮膚病をいち早く見つけられますし、肥満度のチェックもできます。痛みがあったら、その場所を見つけることもできます。また、スキンシップはペットと飼い主の間の愛情を深めます。「幸せホルモン」として知られるオキシトシンも双方で分泌されます。さすがに口(味覚)は使いませんが、第六感に引っかかってくるかもしれません。そしてこれらの変化に気づくためには、毎日チェックすることです。記録をつけるのもいいですね。もし変化や異常を発見したら、早めに獣医に相談しましょう。
添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。