トランプ追従を100%するだけの安倍首相
カナダG7では、安倍晋三首相がトランプと各国首脳との間を取り持つのに“腐心”したと、一部の日本のメディアは報道した。なにしろ、ドナルド、シンゾーと呼び合う仲だからと言うのだ。
しかし、これは日本政府がでっち上げたウソであり、安倍首相はほとんど相手にされなかった。
G7のテーマの一つに「海洋プラスチック憲章」をまとめる話があった。これは、増え続ける海のプラスチックごみを減らすため、世界が協力してプラスチックを再利用や回収可能なものにしていこうとするもので、島国である日本は、真っ先に取り組むべき課題である。
ところが、安倍首相は、「まだ国内法が整備されていない」という理由で署名を拒否してしまった。これに、トランプは“わが意を得た”という顔をしたという。なぜなら、さすがのトランプも、アメリカ1国が反対して総スカンを食らうのを懸念していたからだ。
トランプはこう言ったという。
「これで5対2だ!」
トランプはパリ協定離脱にみられるように、「環境問題なんてクソくらえ」と考えている。そして、安倍首相はトランプ追従100%なのである。
6月15日のウォール・ストリート・ジャーナル紙 は、G7で欧州諸国の移民受け入れについて話し合われたとき、トランプが安倍首相に、こう言ったと報道した。
“Shinzo, you don’t have this problem, but I can send you 25 million Mexicans and you’ll be out of office very soon.”「シンゾー、オマエにはこの問題はないが、オレは2500万人のメキシカンを(日本に)送りつけることができるぞ。そうすればオマエはあっという間に首相の座を追われるだろう」
安倍首相、いや日本人はトランプから、メキシカン同様に完全に見下されている。そして、トランプは日本をまったく知らず、興味もない。それにしても、2500万人とはどこから出てくる数字なのか。
「日本では世界的な英雄」とオレさま自慢を!
日本のメディアは、わが首相が世界のどの国のリーダーよりトランプと仲が良く、外交が上手いことを誇りたいようだ。しかし、このフィクションは、トランプという「超現実」にあっけなく打ち砕かれる。
あの“歴史的な”米朝首脳会談で、トランプは北朝鮮の金正恩に、大統領専用車の車内を見せてオレさま自慢をしたあげく、非核化をうやむやにして「命の保証」をプレゼントしてしまった。
そうして、日本にもプレゼントがあったが、それは膨大な非核化の費用だった。あのときの記者会見を再現してみよう。
記者:北朝鮮に対する経済制裁が続くなかで、非核化にかかる費用についてはどう賄うのか金委員長と話したのですか?
トランプ大統領:韓国と日本が大いに助けてくれるだろう。だから、私たち(アメリカ)が助ける必要はない。アメリカはこれまでもいろいろなところでコストを負担してきたが、韓国は北朝鮮のお隣さんだし、日本だってそうだ。彼らが北朝鮮を助け、寛容な対応をし、彼らを助けるうえで素晴らしい仕事を成し遂げるだろう。
トランプは、日本はアメリカのATMだと言ったのである。
そして、それから2週間ほどたった6月23日、トランプはTBNテレビのインタビューで、「オレは日本では世界的な英雄なんだ」と胸を張った。
それを伝える記事は以下の通り。
“The president boasted that he was seen as a ‘world hero’ in Japan because of the ‘wonderful agreement’ he reached with the North Korean leader two weeks ago.”(大統領は自分が日本において“世界的な英雄”と見られていると強調しました。というのは、2週間前、北朝鮮のリーダーと“素晴らしい合意”に達したからです)
本当にトランプは、なんにもわかっていないうえ、自分がなにをしているのかもわかっていない。もうバカバカしくて、今回はこれ以上書く気がしないので、この辺で終わりにする。
(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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