日本の薬剤師・薬学博士で、現在はコロンビア大学博士研究員の樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身、在米3年が経っても米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」
第13回 「目薬」
コンピューターやスマホ画面の見過ぎ、コンタクトレンズによるダメージ。現代人を取り囲む環境は目に悪いことばかり。疲れ目、乾き、充血、かゆみなど目に違和感を感じたら、しっかり休ませましょう。疲れ目や乾燥におすすめなのが、20分ごとに視点を外し、20フィート(約6メートル)先を20秒間見る「20-20-20ルール」。ぜひ試してみてください。
乾燥
不足した涙液を補助
「目がしょぼしょぼする」「異物感がある」などと感じたときは、涙が蒸発あるいは出にくくなって乾いている可能性があります。ポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)やプロピレングリコール(Propylene glycol)、グリセリン(Glycerin)などの人工涙液で十分に水分を補給しましょう。「Systane Ultra Lubricant Eye Drops」などがありますが、とろみのあるタイプは液体が目の外に流れ出るのを防ぎ、比較的長時間にわたって眼球の表面をコーティングしてくれます。さまざまな種類の人工涙液が販売されていますが、目的とする効果は同じです。人によって使用感が異なるので、好みに合わせて選ぶとよいでしょう。また、点眼は1回1滴で十分。点眼のポイントはまつ毛やまぶた、眼球に触れないようにすること。使用期限は開封後1カ月が目安です。
充血
拡張した血管を収縮
眼球の表面に細かい血管が浮き出て見えるのは、血管が拡張しているため。この拡張した血管を収縮する作用を持つのがナファゾリン(Naphazoline)やテトラヒドロゾリン(Tetrahydrozoline)です。「ROHTO Cooling Eye Drops」や「VISINE Original Redness Relief」などの商品がこれに該当します。血管収縮作用のある成分に、ブリモニジン酒石酸塩(Brimonidine tartrate)というものもあります。「LUMIFY」がこれに該当し、商品のウェブサイトによると、同成分を含むOTC点眼薬は現在のところ同商品のみとのこと。ナファゾリンの作用時間が3~4時間なのに対して、ブリモニジンは、同ウェブサイトでは8時間作用する、とされています。これらの血管収縮作用のある目薬は一時的に充血を取りますが、反動でさらに充血を招くことがあるので、頻繁に使用するのは避けた方がよいとの報告もあります。使いすぎには注意しましょう。
かゆみ
アレルギー反応をブロック
目のかゆみはアレルギー症状の1つ。この連載の読者はアレルギーと聞いてピンときたはずです。そう、ここはアレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬の出番です。有効成分にクロルフェニラミンマレイン酸塩(Chlorpheniramine maleate)やケトチフェン(Ketotifen)と記載されている商品に抗ヒスタミンおよび抗炎症作用があり、「Naphcon-A Eye Drops」や「ZADITOR Eye Drops」があります。前回の連載でもおさらいした通り、抗ヒスタミン薬は「投与経路の違いによって目的や作用が異なる」のがポイント。目薬の場合も、経口薬と違い副作用である眠気を引き起こすことはほぼないと考えてよいでしょう。かゆいからといって目をこすると、眼球を傷つけたり細菌に感染したりすることもあるため、かゆみが出たときには放置せず、早めに対処しましょう。
知っておきたいファーマシー用語
OTC(Over The Counter)Drug
=一般用医薬品(俗にいう市販薬)。処方せんがなくても薬局で買える薬。
Active Ingredient=有効成分(薬効を示す物質)。薬の箱の裏に明記されている。
樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D.
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。