いまや働く人の「50人に1人」が外国人
では、ここで、日本の外国人労働者の現状を見てみたい。
日本はこれまで、外国人労働者の受け入れを “なし崩し的”に行ってきた。その結果、最新の統計(厚労省)では、2017年10月末時点の外国人労働者数は127万8670人で、前年同期から18%増え、増加は5年連続となっている。この増加数は2012年からの5年間で約60万人なので、毎年、10万人以上もの外国人労働者が新たに日本に来ていることになる。
外国人労働者の多くは、技能実習生や留学生の資格で入国した若者たちである。彼らは、製造業や建設業、サービス業の現場で働いている。建築現場でヘルメットを被って作業をしていたり、コンビニで働いていたりするのは、このところ、ほとんどが外国人になった。
日本の雇用者総数は約5800万人だから、外国人労働者はそのうちの約2%を占めていることになる。2%というと少ないと感じるかもしれない。しかし、「50人に1人」と言い換えれば、すでに日本は事実上、移民を容認しているといえないだろうか。
では、彼らはどこの国からやって来ているのだろうか?
誰もが、一番多いのは中国と答えるに違いない。たしかにそのとおりで、国籍別に見ると、中国が37万2263人で全体の29.1%を占めている。
次がベトナムの18.8%で、その次がフィリピンの11.5%となっている。しかし、近年の伸び率ではベトナムがもっと高く、昨年は前年と比べるとなんと約4割も増えている。
それでは、彼らはどんな在留資格で、日本にやって来ているのだろうか?
これは、 技能実習生が25万7788人、留学生が25万9604人で、この2つで50万人を超えている。また、「専門的・技術的分野」とされる“高度人材”も23万8412人となっている。
ちなみに、技能実習生の8割近くが製造業か建設業の現場で働き、留学生の半数以上が卸小売業かサービス業の現場で働いている。外国人労働者の就労業種を見てみると、比率の高い順に製造業30.2%、卸小売業13.0%、宿泊・飲食業12.3%となっている。
つまり、“高度人材”(本当に高度といえるかどうかには異論がある)も来るには来ているが、外国人労働者の多くは単純労働をしており、そういう労働者がいないと、もはや日本の多くの産業が成り立たなくなっているのだ。とくに、都市部のコンビニや飲食店はそうなっている。
「日本は変わってほしくない」から移民に反対
こうした現状を踏まえると、もう移民反対論など唱えている場合ではないだろう。ここまで来たのなら、もう「ご都合主義」はやめにして、政府はきちんとした移民政策を打ち出し、私たち国民は移民に対する認識を改めるべきだと、私は考える。
しかし、移民反対論はいまだに根強い。これまで、政府や民間が実施したアンケート調査では、約7割の日本人が「移民反対」を訴えている。そのなかには、「感情的な外国人敵視・毛嫌い」もあるが、それ以上に次のような点で、多くの日本人は移民がやって来ることに不安を抱いている。
以下、移民反対派が挙げる主な反対理由をまとめると、次のようになる。
(1)移民は日本社会に溶け込まず、その結果、日本の文化や伝統が失われる
(2)外国人の犯罪が増え、社会の治安が悪化する
(3)日本人の雇用が奪われる
(4)移民に対する医療、介護など社会保障費が増大する
(5)すでに移民を受け入れた欧州諸国は失敗している
いずれも、なるほどとは思うが、(2)や(5)に関しては確かなデータはない。とくに、「欧州諸国は失敗している」とは、なにをもってそう言うのかはわからない。ただし、移民を多く受け入れれば、これまでの日本社会が大きく変わることだけは間違いない。
その意味で、反対派は「日本はいまのままでいい。変わってほしくない」と願っているといえるだろう。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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