朝日新聞がスクープした「無期限延期」
皇室記事というのは、書けないことが多く、また、確実といえるソースはほとんどない。それでも、皇室一家の本音を探り出さなければいけないうえ、特オチは許されない。この特オチということで言うと、朝日新聞の皇室取材は伝統的に強く、常に他メディアをリードしてきた。
秋篠宮と紀子さまの婚約も朝日がスクープした。その日は土曜で締め切りは終わっていた。しかし記事を差し替え入稿することになり、土日返上で記事づくりに追われたことを思い出す。
そんな朝日が、今回またも1面でスクープした。小室さんが渡米した翌日、8月8日の朝刊で、「秋篠宮ご夫妻は小室圭さんとその母親に対し、現在のままでは納采の儀は行えないと伝えた」と書いたのである。婚約式を行えないということは、「無期限延期」ということなのか。
前記したように、宮内庁は、2人は婚約していないとしている。とすれば、「納采の儀は行えない」というのは、婚約破棄ではなく、2人の関係の破棄ということではないだろうか。すでに婚約することを「延期した」のだから、「行えない」というのは、そう解釈するしかない。もちろん、「現在のまま」をどう解釈するかによるが、どう譲っても、これで2人のご結婚はなくなったと見るべきだろう。
“金銭トラブル”の発覚ですべてが変わった
眞子さまと小室さんが交際し、近いうちに婚約すると宮内庁が明らかにしたのは昨年の5月のことだった。天皇の孫の初めての慶事だから、メディアは大騒ぎとなった。そうして、小室さんはいつの間にか、学生時代のエピソードから「海の王子」ということになった。
婚約内定発表の記者会見は、昨年9月だった。2人は初めて揃ってメディアの前に現れ、小室さんは「天皇陛下よりお許しを頂きましたこと大変ありがたく存じます」と語り、眞子さまは「温かく居心地がよく笑顔あふれる家庭をつくることができればうれしく思います」と応じて、小室さんと目を合わせた。そうして「納采の儀」は2018年(今年)3月4日、そして挙式は帝国ホテルで11月4日と発表された。
しかし、そんな祝賀ムードは、昨年暮れに一変する。週刊女性が小室さんの母・佳代さんが“金銭トラブル”を抱えると報道したのだ。佳代さんは、元婚約者に「ヘルプしてください」と訴え、400万円超のお金を借りて、それを小室さんの国際基督教大学の入学金や授業料、在学中の短期留学費用に充てていたというのだ。
この元婚約者の男性は、その後、お金に困って自宅を売却、返済を迫ったが、小室母子は「贈与だと認識している」として、それを拒んできたという内容だった。
このトラブルを、おそらく眞子さまは知らなかっただろう。もちろん、秋篠宮夫妻も知らなかったため、その後、天皇家、宮内庁とも頭を抱えることになった。
こうして、世間がどうなるか注目していると、納采の儀を目前に控えた2月6日、眞子さまが突如、宮内庁を通じて文書による納采の儀の延期を発表した。この文書のなかで眞子さまは、延期の理由を「現在予定している秋の結婚までに行う諸行事や結婚後の生活について、十分な準備を行う時間的余裕がないことを認識するようになりました」と述べていた。そして、延期は少なくとも天皇陛下の退位や皇太子の即位などの儀式が終了した後の2020年になるとされたのである。しかし、8月8日の朝日のスクープにより、現在は、これさえもたち消えになったと考えるべきだろう。
ロースクール留学に必要なテストと書類
小室さんの米国留学を知ったとき、私はまさかと思った。なぜなら、どこから見ても、このような留学はあり得ないからだ。ひとり娘をアメリカの大学と大学院に留学させた親としての経験から言うと、小室さんの留学は疑惑だらけである。
まず、ロースクールにアプライ(出願)するには、年4回実施の「LSAT」を受験し、ある程度のスコアを取らなければならない。「LSAT」とは「Law School Admission Test」の略で日本語訳は「米国法科大学院適性試験」となっている。テストは「Logical Reasoning」(ロジカルリーズニング)、「Analytical Reasoning」(アナリティカルリーズニング)、「Reading Comprehension」(リーディングコンプリヘンション)の3つで構成されていて、フルマーク(満点)は180で、ボトム(最低点)は120である。
さらに、留学生だから「TOEFL」のスコアが必要になる。この2つ以外に、基本的なものとして大学の成績証明書、推薦状(何通か)、パーソナルステートメント(自己アピールのエッセイ)、履歴書などがいる。大学の成績証明書は、GPA(成績平均点)でスコア表記されていなければならず、「B+」以上でないと、ロースクールは受け付けない。推薦状は大学教授や勤務先のローファーム(法律事務所)の弁護士などに書いてもらう必要がある。
つまり、これらを全部揃えて、必要なテストで入学ラインのスコアを取るのは、けっこう大変なことなのである。はたして、彼は、これらを全部クリアしたのだろうか?
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。