日本の薬剤師・薬学博士で、現在はコロンビア大学博士研究員の樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身、在米3年が経っても米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」
第14回 「口内炎」
「食欲の秋」到来。でも口内炎(canker sore / mouth irritation)ができてしまったら、食事を楽しむどころか会話もままなりません。口内炎の薬には貼るタイプと塗るタイプがありますが、何より一番大切なのは口の中を清潔に保つこと。ちなみに口内炎の薬は大抵の場合、歯ブラシなどデンタルケアグッズの売り場にあります。
パッチタイプ
メンソールで消炎・鎮痛
まずは患部に貼るパッチタイプ。どこの薬局でも「DenTek Canker Cover patch」を見かけます。こちらの有効成分であるメンソール(Menthol)には消炎作用と鎮痛作用があり、また冷感をもたらすため、熱っぽい感じを軽減できます。口内炎ができるとつい舌で触りたくなってしまいますが、パッチタイプは患部を直接カバーするため、歯や食べ物が当たるなどの外部刺激から守ることができます。直接触れる心配がないので悪化防止にもつながりますね。貼ってすぐは違和感もありますが、時間が経つとだんだんと表面がジェル状になって溶けてくるのでさほど気にならなくなるでしょう。また、販売元によると効果が8時間から12時間持続するそうなので、就寝前に貼るのもいいですね。パッチを患部に貼るときには、20秒間しっかりと押さえてずれないように注意します。この商品は2つに割れるので、患部が貼りにくい場所にある、患部が小さい、などの場合は割って使用してください。
リキッドタイプ
局所麻酔で痛みをブロック
患部に薬液を塗布するタイプの薬も多種類あります。「Kank-A Mouth Pain Liquid」はとろみのある液体タイプ、「Orajel Instant Pain Relief」はジェルタイプとクリームタイプなどがあり、これらの有効成分はいずれも局所麻酔として使用されるベンゾカイン(Benzocaine)です。ベンゾカインは対症療法としてどの種類の口内炎にも効きますが、治す薬ではないため、あくまでも一時的な痛みの緩和を目的に使用してください。口内炎の他、入れ歯や矯正器具の摩擦により口の中に小さな傷ができたときの一次的な痛み止めにも使えます。ウイルス性のヘルペスには米食品医薬品局(FDA)認可のものなど、ウイルスの増殖を抑える薬を使用する必要があります。また、アプリケーターで患部に直接塗布するリキッドタイプなどの商品は容器の中で雑菌が繁殖する可能性があるため、使い残しの薬は捨てましょう。
※基礎疾患がある人は、市販薬であっても服用時に主治医または薬局の薬剤師に相談を。
知っておきたいファーマシー用語
OTC(Over The Counter)Drug
=一般用医薬品(俗にいう市販薬)。処方せんがなくても薬局で買える薬。
Active Ingredient=有効成分(薬効を示す物質)。薬の箱の裏に明記されている。
樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D.
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。