【9月28日付ニューヨークタイムズ】ブロードウェーミュージカル「キャバレー」の脚本家、ジョー・マスタロフさんが9月28日、ニュージャージー州イングルウッドの高齢者施設で亡くなった。98歳だった。
同作品は、英国人作家、クリストファー・イシャーウッドの半自伝小説「さらばベルリン」が原作。英国の劇作家ジョン・バン・ドゥル−テンが「私はカメラ」として舞台化したものをマスタロフさんがミュージカルとして完成させた。1920年代後半のベルリンを舞台に、キャバレーの英国人歌手と作家志望の米国人青年の恋物語を縦糸に、中性的な司会者や同性愛者、売春婦、ドラァグクイーンなどの群像を横糸に、ナチスドイツの台頭とユダヤ人や性的少数者への弾圧を描いた作品だ。ナチスドイツを象徴する「かぎ十字」が青年の友人が付けた腕章にのみ現れる演出についてマスタロフさんは生前、「100個よりも1個の方が効果的なこともある」と話していた。66年にブロードウェーで初演され、最優秀作品賞を含む8部門でトニー賞を受賞。その後何度も再演され、72年にはライザ・ミネリ主演で映画化、アカデミー賞を8部門で受賞した。
1919年、ペンシルベニア州フィラデルフィア市生まれ。41年12月8日(米国時間)の真珠湾攻撃翌日に陸軍に入隊。英国で3年間従軍した。戦後、ニューヨーク市で脚本を学んだ。