【10日付クレインズニューヨーク】来年3月29日に控えた英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)により、最も恩恵を受けるのはニューヨークだとする見方が出ている。ロンドンは長年、世界の主要金融センターとしての役割を担ってきたが、金融活動の多くがニューヨークに移動するとみられているからだ。
欧州の金融機関幹部らは、ロンドンの商取引や投資などの金融活動が、オランダのアムステルダムやドイツのフランクフルトなど立地的に近い欧州内の他国に移動することを望んでいる。米銀行の幹部らは移動先にパリを選ぶ傾向もあるようだ。米銀行大手バンク・オブ・アメリカは、欧州での商取引の拠点をパリに建設中。資産運用会社ブラックロックおよび投資銀行大手JPモルガンも、拠点をロンドンからパリへ移すことを検討しているという。
しかし、ロンドンの金融街「シティ」の行政を担う「シティ・オブ・ロンドン自治体」の経済開発担当、ダミアン・ナスバーム氏は、複数の小さな市場よりも1つの大きな市場の方が費用対効果が高いとして、ロンドンの金融活動がニューヨークに移動するだろうと予想。言語や文化的な観点からも、管理職の多くは欧州内の他国よりもニューヨークへの異動を望むだろうとの声も聞かれた。
ロンドンの企業経営コンサルタント、英経済ビジネス研究センターの調査によると、ブレグジットにより金融関係に従事する2万人が英国から離れ、英国は年間26億ドル(約2920億円)の税収を失うことになるという。