第15回「酔い止め/吐き気止め」 OTC101 ファーマシー探訪 with ひぐち先生

higuchisensei日本の薬剤師・薬学博士で、現在はコロンビア大学博士研究員の樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身、在米3年が経っても米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」

第15回「酔い止め/吐き気止め」長旅! もう怖くない
乗り物に酔う(motion sickness)人は、楽しいはずの旅をする前から憂鬱で、到着するころにはげっそり。本当につらいですよね。車や飛行機に長時間乗ると事前に分かっているのなら、1時間前を目安に酔い止めを服用しましょう。急な移動の場合でも、水なしで服用できるフレーバー付きの噛むタイプもあるので便利です。

「第一世代」の抗ヒスタミン

 乗り物酔いは、振動が三半規管を刺激することで自律神経が乱れるために起こります。代表的な症状に吐き気が挙げられますが、生あくびや頭痛、めまい、冷や汗など症状はその他にも多数。乗り物酔いを抑える薬には、有効成分にメクリジン(Meclizine)を使った「BONINE」やジフェンヒドラミン(Diphenhydramine)を使った「Dramamine Original Formula」などがあり、両成分ともに、抗ヒスタミン薬に分類されます。
 この連載でもたびたび登場し、アレルギー薬として知られる抗ヒスタミン薬には、吐き気の中枢に作用し、自律神経を整える効果もあるということを知っておきましょう。ただし、酔い止めの抗ヒスタミン薬は「第一世代」と呼ばれるもの。これに対し、多くのアレルギー薬に含まれる抗ヒスタミン薬は「第二世代」といって、中枢神経への作用が少なく、抹消のアレルギー症状を抑制するものであり、あくまでくしゃみや鼻水などのアレルギー症状のみに効くよう創られていています。したがって、吐き気など乗り物酔いの症状に適しているとはいえません。他の抗ヒスタミン薬に比べ、メクリジンは、薬の血中濃度が最高時と比べて半分まで減る時間を示す「半減期」が長いことが特徴。つまり、体内に薬の成分が長くとどまっているため、作用の持続時間が長い薬といえます。どちらのブランドも、メクリジンを使用した薬は24時間持続するとうたっています。これらの商品は、乗り物酔い以外にも、テレビやゲームによる「画面酔い」、満員電車や人混みによる「人酔い」などが引き起こす吐き気やめまいにも効くとされています。

「BONINE」
有効成分と容量Meclizine HCI 25mg


「Dramamine Original Formula」
有効成分と容量Dimenhydrinate 50mg


「Dramamine For Kids」
有効成分と容量Dimenhydrinate 25mg


「Dramamine All Day Less Drowsy」
有効成分と容量Meclizine HCI 25mg


「Dramamine-N Long Lasting Formula 10ct」
有効成分と容量Meclizine HCl 25mg

自然由来成分も

 酔い止めや吐き気止めには自然由来成分を使用した薬もあります。「Dramamine Non-Drowsy Naturals」など、一部の商品の有効成分は、なんとショウガ。ショウガに含まれるジンゲロールという成分には制吐作用があることが医学的にも証明されているのです。自然由来成分の場合、眠気など薬を服用したときの副作用が比較的少ないのも安心ですね。

「Dramamine NonDrowsy Naturals」
有効成分と容量ginger (zingiber officinale)(root) 500mg

※基礎疾患がある人は、市販薬であっても服用時に主治医または薬局の薬剤師に相談を。

知っておきたいファーマシー用語
OTC(Over The Counter)Drug
=一般用医薬品(俗にいう市販薬)。処方せんがなくても薬局で買える薬。
Active Ingredient=有効成分(薬効を示す物質)。薬の箱の裏に明記されている。

 

樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D. 
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。