トランプ政権は9月21日、米国永住権(グリーンカード)申請について、審査を厳格化する新規則を提案した。ニューヨークで暮らす日本人にとって、ビザは死活問題。今回はマンハッタン区で法律事務所を開く韓国出身のレイチェル・ユー弁護士に、現在のビザ事情を聞いた。
Q.トランプ政権になって「ビザ取得が難しくなった」といいます。何が変わったのですか?
ひと言で言えないほど影響があります。たとえばこの10月1日に施行された政策によって、一般に「就労ビザ」と呼ばれるH−1Bビザ取得を待つ新卒者が、何千人もの単位で仕事を失っています。
以前、F1ビザで米国に滞在していた新卒者はH−1Bビザを申請すると、ビザが下りるのを待つ間「キャップ=ギャップ」期間が与えられ、米国で働くことができました。しかし政策変更により10月1日以降は「キャップ=ギャップ」期間の滞在や就労は、別に許可がない限り認められなくなってしまいました。
つまり卒業後にH−1Bビザが下りるのを待つ間、こうした新卒者が米国で就労するためには新たに授業登録し、学生ビザを維持しながら就労許可を得るということになりますが、余分にお金がかかってしまいます。F−1ビザを持つ学生にとって、大変厳しい政策といえます。ただし、たいていの場合は10月1日以降に就労しない条件で、不法滞在とされずに米国内に滞在することはできるようです。
Q.H−1Bビザ以外で米国に滞在し、働く方法はあるのでしょうか?
経済的に余裕がある人におすすめしているのが投資ビザによる永住権申請です。ここで申請するのがEB−5ビザです。
投資額は就業率が低い雇用創出ターゲットエリア(TEA: Target Employment Area)と呼ばれる米国内の地域に50万ドル、ニューヨークなどの就業率の高い地域には100万ドル(約1億1230万円)が必要です。
投資先は米国の現地企業や申請者自身が持つ現地子会社など。これに加え、言語や仕組みの壁が高く自分でビジネスを展開できない人は、移住を望む米国内の「地域センター」を投資先に選ぶこともできます。ただし、この場合は 事務費用として約5万ドルを上限とした追加費用が必要です。また公共事業などにより、投資によって10人以上の雇用を生む必要があります。
EB−5ビザはニューヨーク市内でも歓迎されていて、ハドソンヤードやジョージ・ワシントン橋バスターミナルの改修はこの投資によって成り立っています。
Q.相当裕福な人しか選べない選択肢のように感じます。
制度を使って得られるものを考えると、全く手が届かないわけでもありません。日本では両親が子どもに資金を贈与するときには贈与税が発生しますが、米国への投資を通して親から子に資金を渡す場合は税金を払う必要はありません。このように制度を使うこともできるんです。
米国にとっても、外貨を使って米国内で雇用を生み、経済を活性化させ、投資者に永住権を与える。大変良いシステムだと思います。EB−5を扱うためには会社法や機密保護法の知識も必要ですが、こうした移民法弁護士は少ないです。このビザに興味のある人は、まずは気軽に相談に来てください。
自立したいという気持ちが強く、MBA取得を目指して来米しました。米国滞在歴は10年ほどになります。大阪と東京に幼いころ滞在したので日本にもなじみがあります。日本人アシスタントもいるので日本語での相談も大丈夫です。
レイチェル・J・ユー弁護士
韓国出身。韓国語、英語の他、日本語も話せる。専門は移民法。韓国・ソウルの大学を卒業、ニューヨーク州のビジネススクールでMBAを取得後、イリノイ州の法科大学院を卒業。貿易振興のための韓国政府機関、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の諮問委員も務める。
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