【21日付ニューヨークタイムズ】1960年代から70年代の米広告業界で女性のパイオニアとして活躍。米史上最も成功した観光キャンペーンとされる「I ♥(Love) NY」を主導したジェーン・マースさんが16日、肺がんによる合併症で亡くなった。86歳だった。
マースさんは32年、ニュージャージー州ジャージーシティ出身。ペンシルベニア州のバックネル大学を卒業、コーネル大学で英文学の修士号を取得した。64年に大手広告代理店、オグルビー・アンド・メイザーにコピーライターとして入社、副社長まで昇進したが、生活雑貨や食品など「女性向けの商品しか扱わせてもらえなかった」という。
76年にウェルズ・リッチ・グリーンに移り、「I ♥ NY」キャンペーンでクリエイティブディレクターを務めた。同キャンペーンは当初、ニューヨーク州北部のスキー場の宣伝として始まったが、州商務省が犯罪多発と財政難に苦しんでいたニューヨーク市のイメージチェンジを狙い観光キャンペーンとして採用した。ミルトン・グレイザーがグラフィックを、スティーブ・カルメン他2人がCMを制作した。
その後、モラー・ジョーダン・ワイスに移籍。ニューヨーク市の主要広告代理店における初の女性社長となった。アドバタイジングエイジ誌が選んだ「広告業界で最も影響力を及ぼした女性100人」の1人。