手錠されたまま出産は「人権侵害」 女性がNYPDを提訴

 【6日付ニューヨークタイムズ】ニューヨーク市警察(NYPD)の拘置下で陣痛が始まった女性が、手足を拘束された状態で出産を強いられたのは人権侵害に当たるとして、NYPDおよび複数の警官に対し6日、マンハッタン区の連邦地裁に提訴した。精神的ショックに対する損害賠償と、NYPDの拘置下にある女性の出産時は手錠や足かせを使用しないよう、方針を変更するよう求めている。
 訴えによると、ブロンクス区の警察署に拘置されていた女性=当時(27)=は妊娠40週目の昨年2月、陣痛が始まったため同区のモンテフィオーレ・メディカル・センターに搬送。病室に入るなり警官は女性の両手に手錠を掛け、足首に足かせを付けてベッドに拘束。分娩中に一部の拘束器具を外したものの、右手に手錠を掛けたまま出産させたという。
 ニューヨーク州法では、妊娠または出産中、分娩後8週間の女性に拘束具を使用することを禁じている。しかしNYPDのパトロールガイドでは、拘置下にある女性は、出産時も拘束するよう定められている。
 同病院の医師らは、手足を拘束したままの出産は母体に深刻なリスクををもたらすと警告したというが、警官らはNYPDのガイドラインを優先すると主張し、聞き入れなかったという。
 女性は約1時間もがき苦しんで拘束状態で出産。「拘束させての出産は非人道的」と主張した。家族にも相談できず、訴状でも仮名を使用。「産まれた子どもにも明かせない」と話している。
 NYPD法務部の広報担当は「訴訟について慎重に調査している」とした。