不動産の賃貸や売買のみならず、日本企業のニューヨーク進出へのサポートにも高い評価を得る日系不動産最大手、住友不動産販売ニューヨーク。社長の大石究(おおいし・きわむ)さんに2018年の振り返りとともに、新年の展望を聞いた。
「日本村」にアマゾン、低迷に転機か
ー2018年の振り返りをお願いします。
円安傾向にあるので日本からの投資は見極めが長い感じでした。ニューヨークの不動産は取引件数も減り、ダボついた印象です。
マンハッタンは需要に比べて供給が少ないので平均的に目減りせず上がってきました。ですが近年ミッドタウンの超高級富裕層向けのコンドミニアムが続々とでき、急激に供給戸数が増えました。価格も一気に上がり、受給のバランスが崩れました。中古市場でも周りの新築の値段が上がってオーナーさんも若干強気になったのではないでしょうか。
安く売るのは簡単です。だからこそわれわれを通して依頼されているというのがあるので、どれだけ高く売れるか、そこのギャップが埋まらないというのが苦悩した点かもしれません。
ー2018年に良かった点は何だとお考えですか。
商業関係ですね。インダストリーシティー1階のフードコートがオープンしました。ニューヨークで「日本村」を作ろうという構想がついに花開いた感じなので楽しみです。ニュージャージーにも「アメリカンドリーム」というエンタメ施設が着々とでき上がっています。
日本からの出店希望は常にありますが、1社ではハードルが高い。規模の大きなチェーン店でさえも場所決め、賃貸契約、工事など、予想以上にお金や時間がかかり、売り上げにつながらないこともあります。まとまった場所なら集客を任せられ、賃料も比較的リーズナブルなので、ハードルが下がった状態で呼べるのではと期待しています。また、米国の一般的な商業リース期間は5年、10年は当たり前ですが、短いポップアップの数カ月から1年、3年までの相談もできるので、力を試したい人や本格進出への感触をつかみたい人にとっても使い勝手は良いと思います。
ニュージャージーも含め、マンハッタン近郊がホットになってきました。2018年11月には、アマゾンがロングアイランドシティーに「第2本社」を作ると発表しました。その一瞬のバブルはあるなと。住宅、インフラ、飲食店とも足りず、低迷していた賃貸も埋まるでしょう。不動産売買も活気づき始めています。こうした動きを敏感にキャッチして、情報提供していきたいと思います。
ーニューヨークに進出したい人へアドバイスするとすれば、何でしょうか。
何のためにニューヨークに出すのか、考えてみてほしいですね。やはりブランドだと思うんです。「広告塔」といえば語弊がありますが、そのくらいの気持ちが必要です。ガチガチに儲ける心構えで来ると、ギャップや反動から撤退につながりかねない。少し気持ちに余裕がないと難しいかもしれません。
ー成功する人と失敗する人の差は何でしょうか。
「ぶれない」ということではないでしょうか。会社のあるべき姿、オーナーの思いもそうです。逆に失敗するところは、くるくると方針や形態を変えていく。結局、後手後手で「負のスパイラル」に落ちていく。モチベーションの低下にもつながるかもしれません。
ー日本からニューヨーク進出のブームは続くでしょうか。
続くと思います。これから進出したい人はいろいろな人の声を聞いてほしいです。同じ業種だけではなくて、不動産、金融、メーカー、なんでも良いです。さまざまな切り口に気付けると思うので。
あとはまず自分で来てみることですね。1回だけでなく、理想は春夏秋冬。良い季節も大雪のときも経験するのも大切でしょう。いろんなことが起こり得るリスクも、長くいれば分かってきます。
ー不動産を含め、投資のタイミングはいつなんでしょう。
買いのタイミングは自分が買いたいときです。家を買うときは結婚、出産、転勤などという人生の節目がきっかけになります。投資であれば、ちょうど会社が儲かって余裕が出た、どこかに資金運用したいと判断したときです。
ニューヨークを投資先に選ぶのはブランドの他に、損しないという目的も1つです。節税が受けられる上、不動産価格は目減りしづらく、リーマンショックを含めても横ばい以上できています。ニューヨークって安定な投資なんですよ。そういう意味ではいつでも投資が可能な場所です。
私どもは銀行と協力してのセミナーもやっています。投資の方法を知らないといざ、買いたいときに何をすれば良いか分からない。その準備を常にしておくのは良いと思います。
ー2019年、社長としての抱負をお願いします。
毎年商業の誘致と投資のいずれかでセミナーをやっているので、2019年は両方やりたいです。円安であれ投資したい人はたくさんいます。今回のアマゾンの動きを含め、発信していきたいですね。
ー住友不動産販売だからこそできることは何だとお考えですか。
お客様の信頼を裏切らないようなサービスを誠心誠意させていただきます。ニューヨークへの視察という段階でも構いません。「敷居が高い」と思われる人もいらっしゃいますが、そんなことはありません。どうか気軽に声をかけていただければと思います。
住友不動産販売ニューヨーク
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