友人の猫を長期間預かったことがあり、とても懐いてくれたことから猫を飼いたいと思うようになったという田辺賢治さん。預かった猫に情が移りすぎて、(友人)と疎遠になってもいいから、「(猫は)逃げちゃったって嘘をついて、このままもらっちゃおうか(笑)」と考えるほどだった田辺家に念願の子猫がやって来たのは2017年の新緑のころでした。
—フランキーとモーガンとの出会いは?
猫はアニマルシェルターから引き取ろうと決めていたんです。調べていく過程で偶然、キティカインド(KittyKind)というシェルターを見つけまして。そこのサイトにアップされていた猫たちを定期的に閲覧していたところ、いたんです! この子たちが! 一目惚れしちゃったんですね。すぐにキティカインドに連絡したら、ユニオンスクエアのペトコで里親探しのイベントあると教えられて、行ってみたら、いたんです!
—即決ですよね。
引き取りにあたって妻が簡単なインタビューを受けましてね。シェルターのスタッフから「デクロウしますか?(爪を抜きますか?)」と聞かれたときに、爪を切ったことがあるか?との質問と勘違いして「もちろん」と答えたところスタッフの顔色がサッと変わったんです。誤解はすぐに解けたのですが、そんな飼い主がいるなんて想像もできなかったので、逆に僕たちの方がびっくりでした。今では笑い話です。
—その日に連れて帰ったのですか?
次の「試験」は家庭訪問でした。結局、先方との日程が合わなかったので、アパートの中の様子を動画に撮って送って、やっと「合格」をもらいました。猫が不注意に出てしまわないためにベランダがあるかどうかをチェックしたかったようです。
—それぞれどんな性格ですか?
フランキーは食いしん坊でやんちゃ。お説教をすると、待ち伏せしてふくらはぎなどを噛みにくる。モーガンは女の子だからおとなしい。食欲も控えめです。
—印象に残っている出来事はありますか?
フランキーは布とみたらなんでもかじって食べてしまう癖があるのですが、引き取って3カ月から4カ月経ったある日、おもちゃのネズミのひもがないことに気がついたんです。猫がひも状のものを食べたら、最悪の場合は腸に巻きついて命に関わることもあると知っていたので、さあ大変!ということになって。どっちが食べたのか分からないので、翌日すぐに緊急治療室がある動物病院に連れて行きレントゲンを撮りました。
—食べていたのはフランキーですね?
はい。幸いひもは内視鏡で取ることができました。同時にモーガンが腸ヘルニアだということも判明したんです。
—モーガンは大丈夫ですか?
腸ヘルニアの手術は、猫友ネットワークで知った添田晋吾先生にやっていただきました。
—田辺さんご夫妻の暮らしにどんな変化がありましたか?
フランキーが食べそうなものは全部、収納して隠しています。カーテンもブラインドにしました。日本に出張したときは、この子たちの写真や動画ばかり見ています。おやつも買い込んでしまいますね。早く帰りたいから、飲みに行くことも外食も減りました。
—お二人にとってどんな存在ですか?
それまでの夫婦ふたりの気ままな生活から、この子たちのことを考えるようになって、「責任」というか「覚悟」ようなものが芽生えたように思います。
【 教えて!シンゴ先生 】
アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。
添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。
Qペットの皮膚病、その主な原因と症状について教えてください
A ペットが皮膚を掻いていたら、あなたは何が原因だと思いますか?
飼い主の多くはまず、ノミがいるのかな? 何かのアレルギーかな? と疑うのではないかと思います。これらのトラブルは皮膚病で、外耳炎を含めると動物病院で最も多く見られる症例の1つです。主な症状は、かゆみ、発疹、膿疱、紅斑、大量のフケ、脱毛です。ペットの皮膚病は次に挙げるように原因別に分類します。
寄生虫=ノミの吸血によるアレルギーは猛烈なかゆみを引き起こすため、ペットは自分の皮膚をかきむしり、いわゆる「かき壊し」というひどい病変を作ってしまいます。ダニにはさまざまな種類があり、かまれると強いかゆみを引き起こすもの、また、人間に寄生するものもいます。
細菌やカビ=かゆみは中程度ですが、発疹や膿疱を形成することがあります。程度や状況にもよりますが、大量のフケや脱毛を伴うこともあります。糸状菌(真菌症)に感染した場合は、人間に感染する可能性があります。
アレルギー=強いかゆみと皮膚の発赤を伴います。アレルギー性皮膚炎には接触性、アトピー性、そして食事アレルギーがあります。アレルギーの原因となるアレルゲンの特定が治療への手掛かりとなります。アレルギー性皮膚炎も強いかゆみを引き起こし、自分で皮膚をかきむしり病変を悪化させる例が多いです。
その他にも自己免疫性疾患や内分泌(ホルモン)疾患が原因となり皮膚に病変が現れることがあります。また細菌感染が二次的に起こり、皮膚病の病態を一層複雑にすることもあります。
また、猫には好酸球性肉芽腫というアレルギー性の皮膚病があります。後肢や上唇に潰瘍を形成したり、腹部や内股など柔らかいところに強いかゆみを伴う発赤を起こしたりします。 皮膚病も早期の発見と治療が鍵となります。ペットの皮膚に異常を見つけたら、すぐに獣医に相談しましょう。